子どもからやる気を奪う「アンダーマイニング現象」
子どもに何かをやらせるときに「ご褒美作戦」は効果があります。だからといって、なんでもかんでもご褒美で釣っていたら、ご褒美がないと努力しない子になってしまうのでは……と心配にもなります。
その心配、実は心理学的にも証明されている本当のことです。大人が仕事をするのは何のためでしょうか。もちろん、一番は報酬のため。だから嫌な仕事でもなんとか乗り切ります。
では、好きなことを仕事にした人はどうでしょうか? 好きでやっているときには思い通りにできたけれど、仕事になると、それほど楽しくなくなったという話はよく耳にします。これが報酬の怖いところなのです。
心理学では内面的な喜びや達成感を目的に頑張ることを「内発的動機づけ」と呼び、物理的な報酬がやる気の源になっている場合を「外発的動機づけ」と呼びます。
外発的動機づけは効果が現れやすく、特に子どもは「お手伝いしたら10円あげる」「ピアノの練習をしたらアイスね」などと報酬を提示されると、すぐに反応して「よし!」と頑張ります。ところが、一度でも報酬を得られた物事に対しては、報酬がないとわかると、それまで好きだったことでもやる気を失ってしまいます。
このように内発的に行動していたことに対して、報酬という外発的動機が与えられることでモチベーションが下がってしまうことを「アンダーマイニング現象」と呼びます。
心理学者が行った実験を一つ紹介すると、学生をA、Bの2つのグループに分け、それぞれ別室でパズルを解いてもらいました。用意したパズルは実験当時流行していた立体パズルで、学生たちにとっては「チャレンジしてみたい」と感じるものでした。
A、Bどちらのグループもパズルを解いてもらうのですが、Aグループの学生にはパズルが1つ解けるごとに報酬が出ることを知らせ、Bグループには報酬の話はしません。そして一定時間パズルをさせたところで休憩時間を与え、その間、部屋にあるパズルには触って良いと伝えます。
休憩時間中にパズルに触った時間を計測したところ、報酬の出ないBグループのほうが圧倒的にパズルに多く触っていたという結果が出たのです。本来、パズルは楽しいものであり、次々にチャレンジしたかったはずだと思いますが、報酬とパズルが紐づいてしまうと、報酬がもらえないならやりたくない、やっても意味がないという思考が生まれてしまう。
つまりアンダーマイニング現象が起きてしまったのです。
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