「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

おしどり贈与の特例を使えるのは一生に一度

そのため、もし夫婦間で自宅の売買をしたければ、きちんと不動産の価格査定をする必要があります。ここには当然費用がかかってくるでしょう。でもそこまでしないと、税務署から指摘を受ける可能性があるのです。

 

こういった理由で、もし夫婦間で自宅の名義を変えるときには、売買ではなく贈与にして、おしどり贈与の特例を使うことをおすすめします。

 

なお、おしどり贈与の特例を使うにあたっての注意点があります。まず、婚姻期間20年という条件ですが、これは民法上の婚姻関係がなくてはいけません。つまり、内縁関係では使うことができません。

 

また、あくまでも居住用の不動産が対象なので、貸付用の物件や空き家などは対象になりません。自宅の一部が店舗になっているような場合も、その部分は特例の対象外です。

 

ちなみに、おしどり贈与の特例は、自宅の名義を夫から妻、あるいは妻から夫に変えるときに使えるものですが、その他に、新居の購入資金の贈与として活用することもできます。

 

たとえば、新居への引っ越しを考えているときに、「夫がお金を出して、妻の名義にする」といった場面でも、おしどり贈与の特例が使えるということです。

 

つぎのトピックで説明する「住宅取得資金贈与の特例」は親子や祖父母と孫のあいだで使えるものですが、こちらはその〝夫婦版〞と考えてください。

 

おしどり贈与の特例を使えるのは、基本的に一生に一度だけのチャンスです。再婚をして別の配偶者から贈与を受けるときは別ですが、同じ相手からの贈与に対しては、最初で最後のチャンスになりますので、慎重に利用してください。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

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