自信を持って自分の意見を発信していけばいい
民主主義は一人ひとりの貢献によって前進していく
現代に生きる人たちは、一つの缶詰の中に詰め込まれているようなものです。しかし、同じ缶詰の中にいても、見ている世界はそれぞれ異なります。むしろ違っているのが当然です。だから、独裁主義というものには意味がないのです。なぜなら、独裁主義では、誰に意見を聞いても、結局一つの答えしか返ってこないからです。それは本来、あり得ないことです。
一方、民主主義には多様な意見が存在するのが前提ですが、それが形式的なものにすぎない場合は大きな問題となります。つまり、お上が言うことを庶民が忖度して、「お上がAといえば、みんながA」になっているような状態です。このような社会では、選挙制度があっても投票は形式的なものにすぎません。このような民主主義であれば、まったく意味がないでしょう。
各人の世界を見る角度は異なっていて当然です。だから、意見をシェアしたときに、「私はみんなと違う」「私の考えは少数意見だ」と悲観する必要はありません。個人個人それぞれに物の見方は異なるので、本来、誰もがそれぞれの意見を持っているからです。
それでも自分の意見が少数に属することが気になるのであれば、そのときは「自分は他の人が思いつかないような物事の見方をしている」と思ってください。これこそがあなたの個性です。自信を持って自分の意見を発信していけばいいのです。
台湾で起こりがちな出来事は、このようなことです。車が違法駐車しているとか、道が陥没しているとか、道がデコボコだといった場合に、たとえ急いでいたとしても、多くの人が立ち止まって写真を撮り、市役所などに通報します。自分に直接利害のないことであっても、「これは政府の仕事だ」「その場所を所管する部門の仕事だ」とは考えずに、「自分の問題だ」と捉えて行動を起こすのです。道を歩いている誰もが、小さいながらも社会を良くすることに貢献しているわけです。
こうした気質を台湾では「鶏婆(ジーボー)」と言います。「母鶏のように、おせっかいでうるさい」という意味です。これは、「自分に直接関係することではなくても、能動的に貢献したい」という心持ちを表します。このような精神こそが、民主主義では非常に重要な要素の一つになると思います。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
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