「小さな声に耳を傾ける」ことの意味
話を傾聴して共通の価値観や解決策を見出していく
小さな声をすくい上げて社会を前進させていくために創設した「パブリック・デジタル・イノベーション・スペース(Public Digital Innovation Space、略称PDIS)」は二つの成果を達成しています。
一つ目は、何らかの被害を受けていて、立法委員に知り合いもいない人や何もツテもない人に、問題を解決できるポストにいる人間との接点を作ることができます。
二つ目は、発起人が提唱する考えを、より多くの人に知ってもらうということです。これによって公の部門と社会部門に対して発起人の影響力を拡大し、一定の関心を得ることができます。少なくとも賛同の署名をした5000人は、発起人の話を聞いたのです。
また、その5000人の中から志願者を募り、彼らに私たちがまとめたマインドマップ(キーワードやイメージを中心に置いて、思考の過程を整理したもの)を見てもらい、事実と感情を分け、実現可能なアドバイスを行いながら、具体的な構成を一緒に考えて報告書を作成しました。完成した報告書はネット上で公開され、誰でも見ることができるようになっています。
この方式のメリットは、「問題の核心がどこにあるか」を誰でもすぐに知ることができる点にあります。また、図式的思考や構造的思考が苦手な人のために、問題点を把握できる小冊子も作成しています。
このような方法により多くの人の意見を「傾聴」することで、興味や時間のある人同士が集まり、共通の核心的な価値観を持つことが可能となります。これこそが、先ほど話題にした一定の人々の日常に潜むリスクを減らすことにつながります。
一度共通の価値観を持ってしまえば、誰もが異なる革新的な解決策を提案できます。これこそが民主主義の醍醐味です。仮に権利集中の状態にあったり、大臣のみが解決策を提言できることになっていた場合でも、みんながあらゆる解決策を考えることができるのです。
この防虫剤の案件において、私たちは午後2時から6時までの長い時間をかけて、志願者の方たちに現状をお伝えし、コミュニケーションをとりながらお互いを理解し、グループに分かれて解決方法やその方法の実現性を見出していきました。これこそが民主主義の実践に他なりません。
みなさんの参加で知恵を出し合い、核心的な問題を見つけた後、私たちは、その解決策をプラットフォーム上の5000人の賛同者に対し、一斉に返信しました。これは日本語でいう「説明責任」です。発起人にあまり時間がなかったり、台北に来ることができない場合でも、オンライン上のプラットフォームを通じて意見交換を行うことや、政府機関に回答を求めることもできます。それこそがインクルージョン、つまり物事を受け入れる「寛容」という一つの価値です。