李登輝は参加者を扇動する能力が優れていた
インタラクティブによって実現したインターネットの平等
「インターネットの平等」について考える場合、デジタル技術の活用は民主主義にとって非常に重要なものになります。たとえば立法委員になりたいと思ったとき、あるいは有権者が立法委員を選ぼうとする場合に、立候補者の表現能力はかなり重要です。
あなたが「立法委員になりたい」と思ったとしましょう。もし表現能力に長けていない場合、周囲の人はあなたがいったい何を伝えたいのかわからないでしょう。議員の「議」には「話をする」という意味があるように、これまでは「話のうまい人や表現能力に長けた人が選ばれる」傾向が強かったのです。
しかし、インターネットが発達した現在は、たとえ話をするのが不得手な人であっても、「自分の政策や主張を文字や図表にして表現し、ネットを使って広く知らせる」という方法を選択することができます。あるいは、SNSで相互交流を図って、自分の考えを知らせることもできます。
これまでの古い社会であれば、口下手な人はなかなか立法委員に当選することができませんでしたが、今は新しいデジタル技術を活用して、必ずしも雄弁ではないけれど、ネットを通じて自分の主張や政策を広め、有権者の共感を集めて立法委員になる人たちが出てきています。これは素晴らしいことではないでしょうか。
蔡英文総統も、どちらかといえば口下手な部類に入るでしょう。彼女の演説を聞くと有権者はどうしても過去の総統と比べてしまいますが、「支持者の感情に訴えて焚き付ける」という点では、蔡氏はやや弱いように思います。
李登輝氏、陳水扁氏、馬英九氏といった台湾の歴代総統は、大規模な集会で参加者を盛り上げるのに長けていました。「演説の内容が理解できるか、共感できるかどうか」は別として、私は彼らのスタイルが決して嫌いではありません。とくに李登輝氏は、参加者を扇動する能力が素晴らしかったと思います。
蔡英文氏の演説は、そうした魅力には欠けています。その一方で、「非常に信頼できる」というイメージを人々に与えているのが特徴でしょう。どんな危機に際しても、非常に冷静に対応できると感じさせます。それが彼女の信頼感を醸し出しているのでしょう。