不動産取引は一回一回に必要となる金額が非常に大きいため、個人で経験を積むのは難しいとされています。初心者が悪徳業者に食い物にされたという話は後を絶ちません。業界の問題点を知ることが、リスク回避に繋がります。※本記事は、メガバンク出身の金融・ファイナンスの専門家、藤波大三郎氏の著書、『たのしく学べるファイナンシャルプランニング[改訂版]』(創成社)より抜粋・再編集したものです。

「定期借地権」と「一般借地権」はなにが違う?

借地権は建物の所有を目的とした土地の地上権と賃貸借権のことです。これは、前に述べた通り、大正時代に作られたのですが、借主の権利が強くて使いにくい権利となっています。なぜかというと、所有者が使用したいと思って契約の更新を拒絶するには正当事由が必要となり、これが単に所有者が使用したいという程度ではだめで、裁判でもほとんど認められないものなのです。

 

そこで、平成になって定期借地権が制定されました。この正当事由は、昭和16年(1941年)の改正で導入されたものです。当時は太平洋戦争目前の軍国主義の時代であり、いわゆる戦争未亡人などの暮らしを守るため、貸主が借地契約の更新を拒絶することをほとんど不可能としたのです。

 

そのため、この正当事由の導入以降、進んで所有地を賃貸に出そうという地主は少なく、特に都市部において良質な宅地の供給が制約されました。そこで、都市部における宅地の供給を増加させるという観点から、借地権の存続期間の満了後は必ず土地を返してもらえる借地権を作ろうということで定期借地権が作られました。

 

なお、地代については固定資産税相当額以下の地代は対価として認められないとの最高裁の判例があり、通常、固定資産税額の2~3倍の地代が相当といわれています。

 

定期借地権では更新がありません。ですから、確実に所有者に返還されますので安心して貸し出すことができるというわけです。最もよく用いられているのは、事業用定期借地権です。この契約は公正証書で締結します。公正証書は、司法試験に合格して実務を30年以上経験している公証人が作成しますので法的な正確性が高く、これによって裁判所に強制執行を請求できます。

 

つまり、事業者が土地を返還しなければ、裁判所に依頼して業者に頼んで建物等を排除できるのです。裁判を起こす必要もありません。こうしたこともありますので一部でも居住用の土地は対象となりません。期間は10年以上50年未満となっています。なお、公正証書は後で述べる遺言でも用います。この事業用定期借地権の設定においては権利金の授受は少ないようです。

 

一般定期借地権は住宅のための契約で期間は50年以上となり、契約は通常の書面でできることになっています。定期借地権による分譲マンションの建築がその利用例ですが、こうしたマンションは地代がかかるのは当然ですが、解体積立金が必要なことにも注意が必要でしょう。

 

借家権にも定期借家権が作られ、契約更新がないタイプのものができました。不動産の証券化のケースでは、対象不動産の投資適格性の観点から賃料収入の確保と賃貸借期間の明確化が重要であるため、定期借家権が一般的といわれています。なお、定期借家権の住宅の家賃は、旧来の借家権の住宅より家賃が安くなっています。

 

 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

 

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