「空き家の放置」思いがけない出費が…
なお、実家に戻って暮らすつもりはないけれど、せっかく親が遺してくれた家だからとか、いつかは売るかもしれないけれど……などと考えて、空き家を放置している場合、覚えておいていただきたいことが1つあります。
世界的な気候変動の影響で、日本も年々、大きな災害に見舞われるようになりました。2019年にも、台風が来るたびに「観測史上最大級」を更新して、各地に甚大な被害をもたらしたことは、記憶に新しいと思います。
その際、「隣家の屋根瓦が風で吹き飛ばされ、ガラス窓を突き破って家の中に飛び込んできた」といったようなニュースがありました。テレビで「屋根瓦などが風で飛ぶ危険に備えるように」と繰り返しアナウンスされていたので、その「隣家」に住人がいれば、何らかの手立てができたかもしれません。
しかし、「隣家」が、空き家にしている自分の家だったとしたら、自分自身は台風の被害に遭っていなくても被災したことになり、しかもよそのお宅に迷惑をかけてしまった……ということも十分あり得るでしょう。そうなったら、補償の問題が生じ、思いがけない出費に泣かされることになります。
本来、台風や強風の自然災害で、屋根瓦が飛んで隣の家に被害を与えた場合、加害者である家の持ち主は、原則として不法行為に基づく損害賠償責任を負わないので、隣家の修理代の支払義務はありません。ですが、きちんとした管理がなされていなかった場合、台風による不可抗力であったとしても、そのせいで他人の持ち物や他人に被害を与えてしまうと、損害賠償の責任を負うことになります。
台風に襲われなくても、家は人が住んでいないとあちこち傷むもの。空き家を持ち続けること=大きなリスクを抱えること、と言っていいかもしれません。
自治体によっては「空き家バンク」を設け、空き家の所有者と活用を希望する人のマッチングを図っているところもあります。その他、空き家を活かして町おこしや地域活性化につなげようとしている民間の活動もあります。空き家を持て余しているだけでなく、その町で何が起きているのか、地域そのものに目を向けてはいかがでしょうか。
安田 まゆみ
元気が出るお金の相談所 所長
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