「時間と手間とお金をずいぶん損した」
祖父は6人きょうだいの5番目。そのうち子どもがいるのは、祖父と祖父の姉2人の3人で、それぞれの子どもか孫が相続人となります。相続人に連なっている名前を見ても、Eさんには誰だかわかりません。戸籍をよりどころとしてひとりずつあたろうにも、本籍地と住所地は違うので、住んでいる場所を探すのにひと苦労でした。
役所に何度も足を運び、相続人を訪ねるために遠方まで行き、遠縁の親戚にぺこぺこ頭を下げ……。「時間と手間とお金をずいぶん損した」とEさん。そこまでしたのに、家や土地が売れなかったらどうしようと、不安が何度も襲ったと言います。
Eさんは、曾祖父の名義のままであることを知った相続当初から、どのようにしたら、土地と建物を売却できるかと私のところにご相談にみえたのでした。相続のやり直しや戸籍謄本の取り方などをアドバイスし、時間はかかりましたが、不動産コンサルタントの力も借りて、物件は無事に売却することができました。
ただ、実際に売却できた価格は、当初Eさんが思ったほどにはなりませんでした。これまでにかけた費用は何とか回収できましたが、労力に見合った額を手にしたかといえば、さて、どうでしょう。「達成感は得られたので、よしとします」とEさん自身は納得されていましたが……。
Eさんのような目に遭わないためにも、エンディングノートを書く際には、登記事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せたり、インターネットで登記情報を取り寄せるなどして、実家の家や土地の名義を確認しておきましょう。
父親(もしくは母親)が、相続登記をうっかり忘れている可能性がないとは言えません。もし、名義が両親以外の人だったら、いますぐに相続の遺産分割をやり直す必要があるでしょう。よくわからなければ、専門家に相談に行きましょう。
相続の遺産分割協議をやり直す場合、親が存命で記憶も意識も確かであれば、その人たちに関する情報も得やすいですが、親が生きていてこその親戚づきあいだとしたら、亡くなってからでは連絡が取りづらくなるでしょう。
心理的にもいきなり相続放棄を頼むのはどうか……と躊躇(ちゅうちょ)してしまうかもしれません。ですから、早ければ早いほどいいのです。とにかく急ぎましょう!
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