死んでもやりたくなかった「営業」が楽しくなった理由
このように、自分で自分の強みに気づかず、見過ごしてしまうケースはとても多いのです。実は、かくいう私も、自分では全く気づかなかった「強み」を他人に教えてもらった一人でした。
・まさか! これが強みだなんて
私は小学生の頃、極度の口下手でした。授業中に当てられると緊張のあまり教科書を持つ手が震え、声が出ず、何も喋れず、結局、先生は次の人を指名するありさまでした。そんなことが続き、私はすっかり自信をなくしていました。
ところがある日、私の口下手ぶりを見かねた担任の先生が、放課後に私を呼んで、こう言ったのです。「人前で緊張するのは、みんな同じだよ。安田くんは頭の中ではしっかり考えられるのを、先生はわかっている。だから、大丈夫。きっと喋れるよ」
そして、こう付け加えました。「安田くんは、グループでみんなの意見を聞いて、話をまとめていたね。あれはなかなかできないものだよ」と。先生は私を励ましてくれただけでなく、今思えば、私の「意見をまとめるのが得意」ということに注目してくれたのです。
確かに、放課後に先生と二人だけであれば普通に話せましたし、友達との会話は全然問題なくできていました。ただ、人前でだけうまく話せなかったのです。しかし、勉強自体は好きで成績もいいほうだったので、先生の励ましのおかげで、徐々に授業中も発言できるようになっていきました。
先生も(おそらく意図的に)私がちょっとでも話すと、「上手に話せたね」と、みんなの前で大袈裟に褒めてくれました。それを友達も認めてくれるようになり、やがて学級委員に選出されました。
そしていつしか、みんなの前で自信を持って話せるようになったのです。中学生や高校生になると、人前でも普通の学生より上手に話せるようになっていきました。友達と議論をすることが好きで、議論に夢中になると話が苦手などとは全く思わなかったのです。そして、大学生になると放送研究部に入り、番組の企画を立ててはみんなにプレゼンしました。それは毎回好評でした。
卒業後、小さなスイス系の英会話学校に就職すると、死んでもやりたくなかった営業をすることになりました。そんな人生のいたずらに自分でも驚きましたが、最初はポツポツと、そして徐々にバンバンと受注できるようになると、仕事が楽しくてしかたがなくなっていったのです。
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