Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

工芸技術の良き理解者は、アメリカ人である

アートは拡大し続けるといいましたが、チームラボは拡大し続ける中に入ってきた人たちです。デジタル技術だけであれば、先進国にもこのようなタイプのアーティストが登場してきてもよさそうですが、魅力的に作り込まれたデジタルアートは、日本人アーティストの強みでもあります。

 

チームラボは、どんな場所にもこのチームが出向き、制作します(この職人的な姿勢を非効率的と批判する人もいますが、その職人的なこだわりによって作品の品質が保たれているのです)。

 

デジタル技術であれば、技術力は平準化しているので技術展開は外注するという判断もありそうですが、彼らは自分たちのスタッフのみで制作します。当然経費はかさみますが、猪子にこの点を質問すると、「それは単なる信頼以上のもので、精神論ではなく、アートのクオリティを維持するための必須条件です」と言いました。

 

腕の立つ親方と職人のような関係により単なるデジタルを超えた作品をつくり出すのが、ポイントかもしれませんが、こういった技術とオリジナリティへの評価は、日本よりも海外のほうが早いというのが実情です。

 

ものづくり日本といいながら、標準化した大量生産品の生産技術ばかりが残り、肝心の高度な技術を要する職人的なものづくりは、今や風前の灯です。これまでもIT系の新規ビジネスを立ち上げた経験を持つ経営者から、新しい技術開発を伴った新規ビジネスに対して、日本の投資家は消極的であるという話を聞きました。その方のビジネスもアメリカで投資家を見つけて立ち上げたといいます。

 

このような調子なので、職人的な高い技術力も、未知の領域に対する挑戦心もアートの世界ぐらいにしか残っていないのかもしれません。そんなアーティストにこそ、従来の付加価値付与のビジネスモデルでは立ち行かなくなった日本企業には、学ぶところがありそうです。

 

実は、日本の職人的なこだわりを見せる技術力に眼をつけている海外投資家は少なくありません。美術の世界においても工芸などの分野ではすでに海外に才能が流出しています。工芸技術の良き理解者は、アメリカ人であったりするのです。

 

猪子は、カルチャー誌のインタビューでこう述べています。

 

「多くの産業の生み出すものは、デジタル領域によって革新されていき、デジタル・テクノロジーの塊のようなものになっていく。その後の話として、すべてはアートとしてじゃないと生き残れない時代になる。多くの産業、もしくは企業は、生み出す製品やサービス、そして存在自体が、〝人がアート的だと感じるようなもの〟でないと生き残れない社会になっていく」(『GQ JAPAN』2012年6月)

 

この言葉に、これからのビジネスや資本主義の未来を読み解くヒントがありそうです。

 

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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