Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

日本独自の思想と最先端のテクノロジーを融合

アートとデジタル技術の未来

 

アートの世界でも、近年はコンピュータをはじめとする、様々なテクノロジーを使ったエレクトリックでデジタルな芸術作品、いわゆるメディアアートやハイブリッドアートが盛んに制作されています。またデジタル技術だけでなく、バイオ・テクノロジーや宇宙開発、ディープラーニングといった、これまでは芸術の範ちゅうに入らなかった、様々なテクノロジーが新たな価値として創造されようとしています。

 

このような状況で、今世界から注目されているのが、最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツの開発を行うチームラボやライゾマティクス、それに池田亮司といったアーティストです。

 

彼らは三者三様で、独自な世界観を展開していますが、ライゾマティクスは、人気テクノポップユニットであるPerfumeの舞台を演出しているといえば理解される人もいるでしょう。彼らの凄いところは、単なる演出を超えてPerfumeの世界観を表現する環境をつくり出しているところです。

 

チームラボはプログラマー、エンジニア、数学者、建築家、絵師、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、デジタル社会の様々な分野の専門家で構成されているという。(※画像はイメージです/PIXTA)
チームラボはプログラマー、エンジニア、数学者、建築家、絵師、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、デジタル社会の様々な分野の専門家で構成されているという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

また、同じくデジタルアートの先端を走る池田亮司が集積したデータによってつくり出される鮮烈な音と光の世界は、情報化社会を高度に視覚化、音楽化したものとして海外で圧倒的な人気を誇ります。

 

2018年に大々的に開催された日本文化の祭典「ジャポニズム2018 響きあう魂」に井上有一という前衛書家の作品を紹介する展覧会のキュレーターとして私も参加しましたが、同じように池田亮司やチームラボも参加していて、それぞれ別な場所で大掛かりな展覧会を開催していました。

 

池田はパリ、ポンピドゥー・センターで個展を開催し大変な話題になっていましたし、チームラボはパリのラ・ヴィレットという名称の食肉処理場跡地の文化施設を会場に大型のインスタレーション作品を発表して、長蛇の列をつくっていました。私は開会式のときに代表の猪子寿之に会い、夕食時に話を聞きました。

 

チームラボは、英フィナンシャル・タイムズ、英BBCや米CNN、仏ル・モンド紙のほか、世界のアートメディアから、「今、もっとも面白いアート集団」として注目されています。台湾、韓国、シンガポール、米国などに常設展示を持ち、米シリコンバレーで開催した個展は、あまりの好評ぶりに、展示期間が当初よりも約半年延長されたほどです。

 

彼らは、ウルトラテクノロジスト集団を自称し、プログラマー、エンジニア、数学者、建築家、絵師、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、デジタル社会の様々な分野の専門家で構成されています。また、日本美術を土台にした日本独自の思想と最先端のテクノロジーを融合させて、新しい価値観を生み出しているのが特徴です。

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アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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