未満児(0~2歳)保育の利用者数が年々増加するワケ
大規模園が未満児保育に積極的ではない理由として収支が理由の一つに挙げられますが、1人の保育者がお世話できる0歳児3人の収入は、2019(令和元)年度の公定価格によると100名規模の大規模園が約51万円に対して、12名定員の小規模園なら約72万円です。これなら人件費などの諸経費を引いてもお金は残るでしょう。
小規模保育事業は、さまざまな理由で年度途中での転園、退園が少なくありませんが、それでも1年間を通じてなら安定的な利益を見込めると思います。
その理由が月齢と年度の問題です。保育所は一般的には6ヵ月以上のお子さんから預かります。したがって、4月1日の時点で6ヵ月に達していないお子さんは申請すらできないこともあります。
そうなると人気園は定員に達してしまいますから、そのあとに6ヵ月に達して、いざ、保育園に預けようとしても、受付終了となっていることは珍しくありません。結果、開園したてで知名度がまったくない状態でも、どこの園でもいいから子どもを預けたい保護者がいれば、自治体が受け入れを打診してきます。
いまでこそ第1希望に名前が挙がるようになった筆者たちの保育園も、初年度は、申請書類(第3希望まで記入できる)の欄外に第4希望として書かれてあった申込書を見て悲しかった思い出があります。もっとも、経営者的にはそんな感傷よりも健全運営ですから、第4希望でもなんでも入園してくれるならありがたいです。
このように、「認可」は、あくまでも保護者が自治体に申請して、自治体が入園先を決定しますから、広告宣伝費をかけて園児を募集するということはありません。そして、そこにニーズがあるからこそ、自治体は新しい保育所開設の申請を受け付けてくれるわけです。
筆者たちが最初の認可保育園を立ち上げた岐阜県美濃加茂市ではこの10年で未満児の通園率が倍以上になっていますが、だからといって子どもの数が10年で半分になったわけではありません。「少子化なのに保育園をやって将来はあるのか?」と心配されますが、未満児保育に限っていえば、利用する絶対数は年々増えています。
そして、既存の保育園は、面積基準、保育士の雇用人数の問題から容易に未満児の定員を増やすことはできません。ビジネス的にいえばニッチな領域なわけです。
筆者は、小規模保育事業は①保育士による園児への体罰、②保育園の管理体制の甘さによる重大な事故、③職員へのパワハラ・セクハラによる一斉退職、という誠意をもって運営していれば起きないような事態でしか危機的運営にはならないと思います。