少子化は進展しつつも、共働き世帯が主流となったことで「保育園」へのニーズは依然として高い日本。保育園ビジネスには、多角化経営を狙う一般企業が参入するチャンスが十分存在します。企業主導型保育事業には確かにハードルがありますが、乗り越える方法があります。具体的に見ていきましょう。

「全職員が保育士」でなくて大丈夫な種類の施設も

このようななかで待機児童が急速に増加したことから、2015年から新たに「子ども・子育て支援法」が施行されました。新たに「地域型保育」ができたのです。「地域型保育」は、保育所(原則20人以上)より少人数の単位で、0歳から2歳の子どもを保育する事業です。利用時間は、夕方までの保育のほか、園により延長保育を実施します。利用できる保護者は共働き世帯、親族の介護などの事情で、家庭で保育のできない保護者です。また、地域型保育では、保育内容の支援や卒園後の受け皿の機能を担う連携施設(保育所、幼稚園、認定こども園)が設定されます。

 

地域型保育では、保育内容の支援や卒業後の受け皿の機能を担う連携施設(保育所、幼稚園、認定こども園)が設定されます。 出典:内閣府子ども・子育て本部
[図表2]地域型保育の概要 地域型保育では、保育内容の支援や卒業後の受け皿の機能を担う連携施設(保育所、幼稚園、認定こども園)が設定されます。
出典:内閣府子ども・子育て本部

 

「地域型保育」には、具体的に4つのタイプがあります。家庭的保育(保育ママ)は、家庭的な雰囲気のもとで、少人数(定員5人以下)を対象にきめ細かな保育を行う施設です。

 

小規模保育は、少人数(定員6人から19人)を対象に、家庭的保育に近い雰囲気のもと、きめ細かな保育を行う施設です。

 

事業所内保育は、会社の事業所の保育施設などで、従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育する施設ですが、2016年に企業主導型保育がスタートされたので開店休業のような状態です。

 

居宅訪問型保育は、障害・疾患などで個別のケアが必要な場合や、施設がなくなった地域で保育を維持する必要がある場合などに、保護者の自宅に出向き1対1で保育を行うものです。

 

出典:内閣府子ども・子育て本部
[図表3]地域型保育4つのタイプ 出典:内閣府子ども・子育て本部

 

そのなかで子育て支援の一つとして登場したのが「小規模保育」です。政府の待機児童解消加速化プランでは、待機児童のほとんどが0歳から2歳児であることを考え、定員6人から19人の少人数保育所として「小規模保育」の設置を推進したのです。

 

「小規模保育」は、さらに3つに分類されます。A型は保育者の全員が保育士の資格所有者、B型は保育者の半分が保育士の資格所有者、C型は家庭的保育者という市町村が行う一定の研修を受けた者という分類です。

 

小規模保育は、施設基準も緩和されていますので、比較的設置しやすいメリットもあります。都市部では電車通勤をする保護者が多く、最寄りの駅に保育所があれば便利ですが、通常の保育所では場所の確保の問題などからなかなか設置ができません。その点、小規模保育であれば、比較的小さなスペースで設置が可能になりますので駅前の立地のよいところに設置して、保護者の利便性を高めることも可能です。

「小規模保育事業A型」をおすすめするワケ

このように小規模保育は保育者の資格保有率で分類されますので、保育士不足の現状からすれば、保育士がスタッフの半分でいいB型を思い浮かべますが、筆者はA型をお勧めします。

 

その理由は、第一に自治体との信頼関係の構築です。保育所整備が喫緊の課題となっている自治体ならいざしらず、待機児童がそこまで行政課題となっていない自治体では、やはり、「保育士が半分しかいない保育園」の印象はよくありません。

 

第二に収支の問題です。仮に16/100地域で12名定員の保育所とした場合、2019(令和元)年度の公定価格では、A型の0歳児で月24万2790円、B型の0歳児で月20万2670円です。12人だったら月に約50万円の減収になってしまいます。一方で、保育士とそうでない職員でそこまで給与に差をつけられません。コストがそれほど変わらないのに収入が少ないB型のメリットはほとんどありません。小規模保育事業では、そこまで保育士不足で悩む必要がないからです。

 

小規模保育事業は、よほど過疎化が進んだ地域でなければニーズがあると思います。実際に筆者が2020年4月に開園した「りんご保育園とみか」がある岐阜県富加町は、2020(令和2)年12月末で人口5752人という小さな自治体ですが、2021年4月の段階で1歳児だけで満杯になるかもしれないとの相談を受けました。定員12名の小規模保育園は、単純計算で1学年4人いればよいわけですから、そのくらいのニーズはあります。

 

ただし、小規模保育事業にも弱点はあります。それは、定員が少ないため、1人あたりの客単価(あえて表現します)の割合が高いのです。12人なら1人で8%以上の売上になるわけです。

 

よく、定員の半分も埋まれば儲かると思われるのですが、利益率50%なんて甘い事業があるわけがありません。満杯になれば利益20%は確保できるかもしれませんが、たった3人不足するだけで、すぐに赤字運営となってしまいます。

 

しかも、認可は先の予約まで可能なので、枠は確保されているのに入園まで収入がないこともあります。そのあいだに別の保護者の方から「すぐ入りたい」と問い合わせがくると、正直、そちらのほうを優先してほしいと思うこともあります。

 

もう一つ、兄弟がいて上の子が別の保育園に通っていて、その保育園で未満児に空きが出ると、そちらに移ってしまう可能性が高いことです。保護者にしてみれば、送り迎えが2カ所になるのは手間がかかります。認可保育所はどこの保育園でも同じ保育料ですから、手間がかからないほうを選択するのは仕方のないことでしょう。

 

 

河村 憲良

株式会社Five Boxes 代表取締役

 

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