「嗜好品なら迷惑がかからないようにして欲しいです」
集合住宅だとこういう問題が起こるので、次は戸建を探すつもりとのこと。ただコロナの状況下、この先も不透明なのである程度方向性が見えてきてからの引っ越しにしたいと悩んでいるようでした。
「すぐに引っ越しもできないし、かと言ってお隣とはタバコのクレームから顔を合わせにくいですし。お隣とは親しい訳ではありませんが、顔を合わせたら挨拶はしていました。でも今は互いに険悪になってしまって。主人は仕方がないんじゃないかって言うんですが、私はタバコの煙に耐えられません」
理絵さんはご両親もタバコを吸わなかったので、結婚相手も喫煙者ではない人を選びました。まさかタバコのストレスをコロナ騒動で味わうとは思ってもいなかったのです。
「お隣が引っ越ししてくれたらいいのにと思います。タバコを吸われるなら、郊外の戸建とか。どうして被害者の私たちが、引っ越しを考えないといけないのでしょうか。嗜好品だって言うなら、人様に迷惑がかからないようにして欲しいですよ。そう思いませんか?」
理絵さんの怒りが収まることはありません。
安部さんは、頭を抱えます。
「入居者同士のトラブルは、当人同士で解決してもらうようにしているのですが、特にコロナ以降はそうは言っていられなくて。そんなこと言ったら、こっちが延々と責められるんですよ。そして最後には、じゃあ引っ越しするから費用出せって言われて。それこそ家主が出してくれるはずもないじゃないですか。だからただひたすらクレームを聞いて対応している感じです」
しばらくして季節的に寒くなってきて窓を閉めるようになり、タバコのトラブルは沈静化しました。理絵さん一家も引っ越しをせずにいます。ホッと一息ですが、安部さんは今から春が怖いと言います。コロナが収まらない限り、窓を開ける時期にはまたタバコのトラブルが再燃してしまうでしょう。
「今のうちに対策を考えないと。何かいい案があったら、助けてくださいよ」
安部さんの悩みは尽きません。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士
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