医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

普通の家庭で育った子どもは私立医学部に不向き

このように、「国公立医学部か、私立医学部か?」にはさまざまな視点があり、一概にどちらがいいと言えるものではありません。各家庭、各受験生がどの視点を優先するかで、選択する道は異なってきます。ただ、長年にわたり多くの受験生を医学部へ送り出してきた私の経験から言えば、いわゆる普通の家庭に育った子どもは私立医学部には不向きなように思います。

 

私立医学部には、普通の家庭の子どももいるにはいますが、少数派です。大多数を占めるのが、開業医をはじめ経済的にかなり裕福な家庭の子どもで、着るものにしても食べるものにしても人生観にしても、普通の家庭の子どもとはまったく違います。一般家庭の子どもがその世界に交じり、別世界の話を始終聞かされることはつらいものですし、卑屈にもなりかねません。そのような環境下で6年間学業を続けていくことは困難がともないます。


 
10年ほど前、私の教え子にもそういったケースがありました。両親が無理して1000万円ほどのお金を捻出し、新設の私立医学部に入学させましたが、周囲が自分と違う世界の人だったことから、話が合わず居づらくなリ、1年生の秋に辞めてしまいました。

 

普通の家庭に育った子どもは、一般家庭の子弟も多く、学費が低めに抑えられている旧設の私立医学部か浪人を覚悟して国公立医学部を目指すほうが賢明だと私は思います。国公立医学部であれば、勤務医の子どもはいても、開業医の子どもは多くない可能性がありますから。「国公立医学部か、私立医学部か?」は、当人のこれまでの人生とフィットするかどうかを、第一に考えて選ぶべきかもしれません。

 

小林 公夫
作家 医事法学者

 

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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