日本の「IT投資」が米国と比べて遅れている理由
現在はAIやIoTなどの発展を背景とする第4次産業革命が進行中といわれます。
IT投資については、2016年までの10年間に米国のIT投資が実質50%以上伸びたのに対して、日本のIT投資は7%しか伸びませんでした(【図表1】)。
IT投資の規模が大きいと、それを提供するための様々なテクノロジー企業が育ちます。日本のIT投資の遅れはコロナ禍での現金給付の手間取りなどで明らかになったため、2020年9月に誕生した菅政権は、デジタル化の推進を政策の優先事項に挙げました。
その背景には、米国では従業員の解雇をしやすいので、人をIT機器で代替するのが容易である一方、日本は正社員の解雇がむずかしいので、従業員をIT機器で代替するのに時間を要するという面があります。
また、米国企業にはIT投資をする企業側にも最先端のIT技術を理解したエンジニアが多くいる一方、日本ではITのエキスパートはIT企業側に多く、受入企業側に少ないので、SIベンダーの言うがままのIT投資をしてしまい、それがレガシーとして残って新陳代謝を阻害するといったことがあります。
2020年4月に三菱UFJフィナンシャルグループで東大理系修士の亀澤宏規社長が誕生し、メガバンク初の理系トップとして話題になりましたが、米国大手テクノロジー企業ではエンジニアとファイナンスのダブル修士号を持ったCEOが相次いで誕生しています。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、ウィスコンシン大学の情報科学の修士と、シカゴ大学のMBAを持っています。アルファベットのサンダー・ピチャイCEOも、スタンフォード大学のエンジニアリングの修士とペンシルバニア大学のMBAを持っています。
日本企業の社長には営業や工場の現場出身者が多いですが、急速にテクノロジーが進展する現在はサイエンスまたはエンジニアリングと、ファイナンスの高度な知識が必要になったといえます。ナデラCEO(53歳)とピチャイCEO(48歳)はともにインド人ですが、日本の大企業の社長に、若いインド人が就くことが想像できるでしょうか?
IT投資の差の結果、2018年までの10年間の生産性の年平均伸び率は米国が0.9%と、日本の0.6%を大きく上回りました。日本の賃金伸び率が小さいのは、生産性も低いからだと長年いわれてきました。
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