建築設計のノウハウを最大限活用できれば・・・
筆者は、これまで誰も引き受けないような条件の土地でも、その活用に向けて建築設計を手掛けてきました。斜面地、変形地、旗ざお状・・・とその条件の悪さは多岐にわたります。
設計案を見せると、その土地を持つ依頼主の誰もが、「えっ!そんなになるんですか」と、思いのほか立派な建物ができることに驚きます。
多くの人は、そうした条件の悪い土地では大した建物を建てることはできまい、たとえ賃貸住宅を建てられたとしても収益にはそれほど期待できないだろう、と思いがちです。だから、予想を裏切られたような感覚を持つのです。
一般に条件の悪い土地は有効に活用できないかというと、決してそうではありません。その悪条件を乗り越えることも、逆手に取ることも可能です。ただしそれには、一つ非常に重要な前提条件があります。
それは、建築設計のノウハウを最大限に活用することです。そして、今の市場をよく分かっている不動産管理会社のノウハウを生かすことです。
建築設計者として皆さんに分かっていただきたいのは、建築とは不動産の価値を見いだし、それを生かそうとする行為であることです。それができるのが、建築設計者です。ただ見栄えのいいものをつくるだけの職能ではありません。
東京都内に立地する賃貸住宅で平均の入居率が85%といわれる中で、私たちが設計を手掛け不動産管理する賃貸住宅は平均入居率97%超と、稼働率の高さを誇っています。日頃から、満室稼働という高水準を目指しているからこそ達成できる数字です。
家賃に関してもハイレベルを実現できていました。賃貸住宅の市況が良い時代は、近隣相場の10%増しの水準を設定していたほどです。さすがに最近はそこまで市況が良くありませんが、近隣相場の新築物件より高い数値を設定しています。
家賃設定が的確なので、事業リスクの最も高いといえる完成時点の難関を乗り切ることができています。
新築時の「家賃設定」で事業の成否が決まる
賃貸住宅事業の一番のリスクは完成時点です。その時点で入居率をどこまで確保できているかが問われるのです。
早くに入居率を確保しようと家賃設定を低めに抑えると、確かに入居者は確保できるでしょうが、それは同時に、家賃を最も高額に設定できる新築時のメリットをみすみす捨て去ってしまうことになります。
そのバランスを取るのが難しく、そのかじ取りで事業の成否は決まるといっても過言ではありません。
私たちにそれができるのは、不動産管理会社をグループ内に抱えているおかげです。賃貸住宅の市況をよく分かっている不動産管理会社のノウハウが、建築設計の観点で生かそうとする不動産の価値に事業性というリアリティを与えるのです。
では次回は、こうした建築設計と不動産管理の組み合わせで賃貸住宅の経営をどのように成功に導いてきたのかを、具体例を通じて紹介していきましょう。