前回は、昭和30年以降、土地価格が大きく上昇した時期について取り上げました。今回は、バブル時代以降の「地価動向」を見ていきます。

かつては、景気が悪くても地価は下がらなかった

前回の続きです。

 

では、景気が悪くなれば、地価は下がったのでしょうか。景気の波は浮き沈みがありますから、過去には、景気の良い時期もあれば、反対に悪い時期もありました。しかし、地価が下がることはほとんどないに等しかったのです。

 

再び、市街地価格指数の変動率の推移を見てみましょう。

 

景気の波は山あり谷ありですから、地価動向を示す市街地価格指数の変動率もそうした景気循環に合わせ増減を見せます。しかし、変動率がマイナスになる、つまり前年の値を割り込むことは、これから説明する2つの時期を除いてなかったのです。

 

一つは、石油ショックの時期です。昭和40年代後半に見られた地価上昇の後に当たります。さすがにこの時は、市街地価格指数の変動率は住宅地だけでなく、工業地も商業地も軒並み、戦後初めての前年割れを見せています。

 

それまでは、地価は上がり続ける存在でした。値上がり率は小さくなっても、下がることはありませんでした。そうした事実が長い年月を積み重ね、土地神話を形成してきたのかもしれません。

 

その土地神話が崩壊するのは、市街地価格指数の変動率がマイナスを記録したもう一つの時期、いわゆるバブル崩壊の時期です。石油ショックの時期は、変動率はマイナスに転じたものの、すぐに持ち直しました。ところが、バブル崩壊の時期はそうした回復力を見せることなく、いったんマイナスに転じた変動率は2012年に至るまでずっとそのまま。プラスに持ち直すことはなかったのです。

 

さすがに20年にわたって地価が上がらなければ、土地神話を信じる人はいなくなるでしょう。土地は持っているだけで下がり続ける。むしろそれが、この20年の実相です。土地神話は過去のものとして人々の意識の中から葬り去られています。

バブル崩壊以降、上昇現象は影を潜めるように…

もちろん、バブル崩壊以降、地価は一貫して下がり続けたわけではありません。2000年に入ってからは、ミニバブルと呼ばれた上昇期もありました。リーマンショックを引き金に再び下降線をたどった地価には底入れ・反転の兆しも見られます。

 

ただそれは、大都市圏の一部に限られます。かつてのように周囲に引きずられるかのように、どこでもかしこでも地価が上がるという現象は、日本経済を取り巻く環境変化を背景にすっかり影を潜めました。

 

つまり、地価は無条件に上がり続け、下がることはない、という過去の現象が、事実として否定されたのです。地価は上がりもすれば、下がりもするものである―認識をそう改めざるを得なくなりました。

 

土地神話の崩壊は、神話の単なる崩壊だけでは済まされません。現に土地を所有する人にしてみれば、地価は上がりもすれば、下がりもする、と悠然と構えていられないはずです。手をこまぬいていれば、資産価値は下がりかねません。また、その間に相続を迎えた地主さんも多くいました。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

変形地の価値を高める マンションづくり

変形地の価値を高める マンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地…。 活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために必…

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