土地から「収益」を生み出すため、自ら仕掛ける所有者
前回の続きです。
そこで叫ばれるようになったのは、「所有から利用へ」という土地所有者としての姿勢の転換です。土地は持つことそのものに価値があるのではなく、利用することにこそ価値があると認識し、土地への向き合い方を改める必要があるという考え方です。
言い換えれば、キャピタルゲインという土地の値上がり益に期待を掛けるのではなく、インカムゲインという土地の利用収益を生み出そうという考え方です。収益が生まれるのをただ待つのではなく、収益を生み出すために自ら仕掛けていきます。
仮に300坪の土地を持っているとしましょう。土地神話の成り立っていた時代であれば、空き地のままでもよかったかもしれません。時機を見て売り抜ければ、取得価格を大きく上回る収益が得られたはずです。
しかし、そうした土地の値上がり益にはもはや期待できない時代です。土地の利用収益を生み出すために、その土地に例えばマンションを建てて、それを貸しに出すことこそ、第一に考えるべき道です。
相続税などの「保有コスト」が土地活用を促進
「所有から利用へ」という流れは、土地神話の崩壊とは別の角度からも促されています。それは、税負担です。土地は持っているだけで固定資産税が掛かります。それを負担するには、何らかの収益が必要です。そこで、土地活用が求められます。
固定資産税は、その評価額を課税標準にし、それに標準税率1.4%を乗じて額を算出します。したがって、評価額が上がれば、それに連れて税額も上がります。この評価額は3年に1度の評価替えで見直されますから、地価が上がっている局面では固定資産税負担という保有コストはかさんでいくことになります。
土地の値上がり益に期待できた時代は、そうした保有コストを上回る売却益が得られたので、その存在をそう気に掛けることはなかったのでしょう。課税標準を求めるのに必要な固定資産税評価額が実勢価格に比べ低い点もプラスに作用していました。
しかし、土地神話が崩壊し、土地の値上がり益には期待を持てない時代です。自ずと、土地の利用収益に頼らざるを得ません。その土地を基盤に事業を展開し、その収益で固定資産税という保有コストを賄うほかないのです。
土地所有者にとってそれ以上に深刻なのは、相続税です。固定資産税と違って「今」課される税ではありません。自身の遺した資産を受け継ぐ相続人がそれぞれ、その資産額に応じて課される税です。先祖から受け継いだ資産が、自ら築き上げた資産が、次の世代に引き渡す段階で目減りする恐れがあるわけです。しかも、資産額が大きいほど税負担はかさみ、結果として目減り分は増えます。お金のからむ話ですから、関係者間でいさかいの原因にもなりかねません。相続は「争族」とさえいわれて問題となってきています。
相続人が将来負担することになる相続税の額を何とか抑えようと、土地所有者は相続税対策を思案します。この相続税対策が、土地の利用を促すのです。