いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

新規顧客を獲得するマーケティング戦略

AI時代において単純な手続き業務が自動化されることが見込まれる中で、経営参謀としての業務や各種コンサルティング業務などの自動化されにくい業務をいかに獲得するかといったマーケティング戦略についてお伝えします。

 

自動化されにくい業務を獲得するアプローチとしては次の2つが挙げられます。

 

①「直接的に自動化されにくい業務を獲得する」
②「獲得しやすい手続き業務を受注し、その業務を通じてお客様との信頼を築いたうえで自動化されにくい業務を提案し獲得する」

 

紹介したくない人については「相手の話が聴けない人」という意見が多かったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
紹介したくない人については「相手の話が聴けない人」という意見が多かったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

それぞれの業務内容の詳細や置かれた状況などによって、どちらのアプローチが業務を獲得しやすいかは異なります。そのため、ここからお伝えする内容は、手続き業務か自動化されにくい業務かを問わず、士業としてお客様を獲得していくために必要なマーケティングの考え方についてお伝えしていきます。

 

士業の主な顧客開拓ルートには、①「既存のお客様からの紹介」、②「他士業や他業種からの紹介」、③「ウェブからの問い合わせ」、④「セミナーの開催」があります。まずは①の「既存のお客様からの紹介」について考えていきましょう。

 

顧客開拓ルート①「既存のお客様からの紹介」

「信頼できる人にお願いしたい」心理

 

消費者は何かの仕事を依頼するにあたり、「依頼した後に後悔したくない」という心理から「信頼できる人にお願いしたい」と考えます。この場合の「信頼できる人」には、「能力的な信頼」と「人間的な信頼」を求めます。

 

インターネットで検索すれば多くの士業が見つかります。しかしインターネットから得られる情報だけでは、能力的にも人間的にも信頼できるかどうかわかりません。そして、その信頼の確証がないまま仕事を依頼することは難しいでしょう。

 

特に、経営参謀としての業務やコンサルティング業務などの自動化されにくい業務は、手続き業務に比べて具体的な業務内容がイメージしにくいため、その価値を表現することが容易ではありません。また、手続き業務に比べて報酬も高額になるケースがほとんどです。そのため、より強く「信頼できる人にお願いしたい」という心理が働きます。

 

この点、実際にそのサービスを受けた人からの紹介ならば、一定の信頼が保証されます。また、安心して依頼できるなら、少々値段が高くてもお願いしたいという心理も生まれます。このように既存顧客からの紹介は成約率も高く、業界相場にも影響を受けにくいため、自動化されにくい業務の獲得のためには注力すべき顧客獲得ルートです。

 

こうした紹介を得るには、顧客満足度の高いサービスを提供する必要があることは言うまでもありません。この顧客満足度についても、「機能的価値」と「情緒的価値」の2つの視点から考えなければなりません。

次ページ自分の強みや特徴を明確に表現することが重要
経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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