事業の拡大が個人の幸せと必ずしもリンクしない
クライアントの人生の重要局面に関わる
私はさまざまな経営者と関わる中で、「どういう人生を歩みたいのか」を明確にしないまま、やみくもに売り上げと利益を伸ばして潤沢な財産を築き、周りからは成功者といわれながら、「自分はこんな人生を送りたかったんじゃない。もうこれ以上経営を続けたくない」と嘆く経営者を何人も見てきました。
中には「もう死にたい」という方もいました。 事業の拡大が個人の幸せと必ずしもリンクするとは限らないということは、私がコンサルティングの経験で得た貴重な学びであり、経営の助言をするうえで重視していることの一つです。
事業をどのように展開するか、経営を続けるか売却するか、相続で財産をめぐって兄弟と争うか──人生に大きな影響を与えるこうした判断は、最終的に自分が「どういう人生を歩みたいのか」という人生観や価値観に基づいて行うべきであり、それを考慮せずに近視眼的に判断すると大きな後悔につながりかねません。
士業の仕事は、人生の重要な局面に関わることが多いものです。だからこそ、判断の際にそうした視点も考慮するよう促すことで、より精度の高い提案ができるようになり、クライアントにとってもかけがえのない存在となれるでしょう。
自分の人生観や価値観をきちんと聴いてくれる人は決して多くありません。しかし、人生の重要な局面においては人生観や価値観をじっくりと聴いてほしいものです。そういった判断のサポートは、まさに人間ならではの仕事であり、こういった関わりがクライアントとの関係を長期的に維持していきます。これはどれだけAIや機械が進歩しても、最後まで人間に求められる仕事ではないでしょうか。
藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー
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