定年前後はお金に関する様々な誘惑があり、危険な罠にはまって老後破綻に陥る人も多いです。しかし、50歳を過ぎたらするべきこと、してはいけないことを知っておけば、老後のお金の不安は解消できます。今回は、「退職金」について考えます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

退職金をどうするかは、焦らずゆっくり考える

退職金は、現役のときに給与振込に用いていた銀行口座に振り込まれます。やはりまとまった金額のお金が普通預金口座に置いてあったりすると、「何か買わなきゃ」「何かで運用しなきゃ」と思う人が多いようです。

 

Dさんの失敗は、支店長から自尊心をくすぐられたこともありますが、おそらく心のどこかで、「こんな超低金利のときに、普通預金に1600万円も預けたままにしているのもなあ。何か大きく増やす手立てはないものだろうか」という気持ちがあったのだと思います。

 

そこにタイミングよく支店長から「お会いしたい」という連絡が来て、実際に会ったら、実はDさんの後輩という話になって一気に親密度が増し、さらに後日、菓子折りを持ってわざわざ自宅に立ち寄ってくれ、かつ支店の新人に仕事を教えてくれとまで言われて、さぞかしDさんは気分がよくなってしまったのでしょう。

 

Dさんの「何か運用しなければ」という焦りの気持ちと、自尊心を上手にくすぐった支店長の心理作戦は、大いに成果を挙げました。完全にDさんの負けです。

 

でも、退職金なんてずっと放置しておけばいいのです。これは面白いほど多くの方に共通するのですが、退職金をそのまま置いておけないのです。どうも大きなお金は銀行の普通預金ではなく、「何かに変えなくちゃ」と思ってしまうようですね。退職金おそるべしです。

 

退職金を焦って何かに変える必要はありません。一呼吸おいて、ゆっくり考えたらいいのです。

 

特に、これまで投資をしたことがない人は、いくら退職後に時間があるからといって、株式投資やFXに手を出すのはご法度です。ビギナーズラックで儲かるケースはありますが、大概の人は大失敗します。

 

だからこそ、投資信託で運用するということも視野に入ってくるわけですが、こと退職金の運用に関して、全額を投資信託の買付に回すのは避けましょう。Dさんのように銀行の口車に乗せられると、容赦なく退職金全額をロクでもない投資信託の買付に回されますので、注意してください。

 

もちろん、投資先のマーケットの環境がよければ、利益が得られますが、マーケットの環境が悪化すれば、運用成績がマイナスになり、かつ途中で繰上償還されるケースもありますし、そうならない投資信託を選ぶのが、また一苦労です。

 

退職金は老後の生活を支える大事なお金ですから、不用意に金融機関から勧められる投資信託を買うべきではありません。

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

山中 伸枝

東洋経済新報社

定年前後の5年間、お金との付き合いには罠がいっぱいあります。老後の生活が始まる前に破綻してしまう人もいるくらい、とっても危険な罠です。この本では、その危険な罠にはまらないよう、筆者自身が実際に本人たちから聞いた…

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