市場規模の拡大を続ける「成長産業」の一方で…
皆さんは「衰退産業」に、どんなイメージをもっているでしょうか。
衰退している業界は、世の中にいくつもあります。例えば印刷、出版、広告、映画業界。カメラ業界もその一つでしょう。一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)の「デジタルカメラ統計」によれば、2010年のデジタルカメラ総出荷台数は約1億2146万台でした。ところが2019年には、約1521万台とほぼ8分の1にまで落ち込んでいます。
背景にあるのは、スマートフォンの普及です。2007年のiPhone登場後、デジタルカメラではなくスマートフォンで撮影をする人が急増しました。その結果、特にコンパクトデジタルカメラの売上が落ち込み、カメラメーカーは苦境に陥っています。
百貨店も衰退産業だといえます。数十年前の百貨店は、豊富な品揃えで消費者にワクワク感を与える特別な場でした。ところが、インターネット利用者が増えてあらゆる商品がネット通販で買えるようになり、百貨店の優位性は失われました。一般社団法人日本百貨店協会の「全国百貨店売上高概況」によると、2010年における全国百貨店の総売上高は7246億円余。しかし2019年には、6404億円余となっています。
こうした流れを受け、各地で採算のとれない百貨店が閉店していることは、ニュースでご覧になったことがあるのではないでしょうか。また、新聞業界や出版業界も、インターネットで情報が得られるようになって売上を減らしている業界の一つです。
これに対し、市場規模を拡大している「成長産業」もあります。代表格はIT業界でしょう。矢野経済研究所の調査によれば、2011年度の国内民間IT市場規模は10兆6390億円でしたが、2019年度には12兆8900億円となっています。フードデリバリー業界やインターネット広告業界、介護福祉業界なども成長産業に含まれます。
着物業界の市場規模は、最盛期の1/6にまで縮小
筆者が身をおくきもの業界も、衰退産業です。後述するように、現在の市場規模は最盛期の6分の1以下に過ぎません。また、昔からのしきたりに縛られ、IT化は進まず、M&Aなど一部のケースを除けば新規参入する企業もほとんどないまさしく衰退産業です。
ディーエムソリューションズが2019年に行った調査によれば、これまでにきものを着たことのある人は53.6パーセント。これは、10代から70代を対象にした調査なので、きものになじみのない若者のあいだでは、きものの着用経験率はさらに低いと予想されます。
きものをもっていない人も増えています。同じくディーエムソリューションズの調査によれば、きものを着たことがある人のうち、なんと73 .6パーセントがきものを一枚ももっていないと答えています。
きものが女性にとって「たまに着るスペシャルな衣装」で、もっていることがステータスシンボルだった時代は明確に過去のものです。もっている多くの人にとっても、「めったに着ない、箪笥の肥やし」になっているのです。
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