獣医師は新卒者合格率が既卒者より圧倒的に高い
動物たちの健康管理と病気治療に携わる獣医師。そんな未来の獣医師候補を決する、第72回獣医師国家試験の合格発表が、2021年3月15日にあった。農林水産省管轄の国家試験である獣医師試験、2021年の受験者数は1146人(新卒者961人)、合格者数は953人(新卒者885人)、全体の合格率は83.2%(新卒者92.1%)で、前年比3.3ポイントダウンという結果だった。
過去5年と結果と比較すると、2021年は全体の合格率では3番目。新卒者の合格率でも3番目だ。過去5年の各大学のランキングの推移は別表に示したので、確認していただきたい。
>>【全貌はコチラ】獣医師国家試験「大学別合格ランキング」2021 <<
早速、2021年の獣医師国家試験について、新卒者の結果にフォーカスして見ていこう。新卒者の合格率が高いのは、医師国家試験、歯科医師国家試験と同様だが、獣医師国家試験の場合、その差は圧倒的だ。
2021年は、16校中12校が、新卒者合格率は90%を越えている(2020年は14校だった)。80%台は、大阪府立大学の84.6%、鹿児島大学の84.4%、岐阜大学の83.3%、岩手大学の80.0%の4校だった。
毎回注目なのが、最難関校の東京大学(農学部農学生命科学研究科獣医学専攻)だ。90.9%と90%以上の大学のなかでの最下位である13位に甘んじている。
上位ベスト5ランキングを見ていこう。
1位は同率で100%を達成した、鳥取大学(農学部共同獣医学科)と山口大学(共同獣医学部)だ。鳥取大学は前年13位(93.9%)から、山口大は前年15位(84.8%)からの大躍進だ。
3位は宮崎大学(農学部獣医学科)で96.3%(前年6位・96.7%)。4位は東京農工大学(農学部共同獣医学科)で95.1%(前年11位・94.4%)。5位は日本大学(生物資源科学部獣医学科)で94.8%(前年3位・97.5%)という結果だった。
欧米水準の獣医学教育実施に向けて、共同教育課程を展開する大学が3校(鳥取大学、山口大学、東京農工大学)上位に入っていることは要注目かもしれない。
共同教育課程を展開するのは、北海道大学(獣医学部共同獣医学課程)と帯広畜産大学(畜産学部共同獣医学課程)、岩手大学(農学部共同獣医学科)と東京農工大学(農学部共同獣医学科)、岐阜大学(応用生物科学部共同獣医学科)と鳥取大学(農学部共同獣医学科)、山口大学(共同獣医学部)と鹿児島大学(共同獣医学部)という国立の各大学だ。
共同教育課程により国家試験合格率のみならず、獣医学の教育全般において功を奏するのではないかと予測されるが、その傾向はさらに強くなると思われる結果だ。
しかし、共同教育課程を実施している2校で、昨年から大きくランニングを落としたのが、岐阜大学(応用生物科学部共同獣医学科)と鹿児島大学(共同獣医学部)だ。岐阜大学は1位(100%)から15位(83.3%)、鹿児島大学は4位(96.9%)から14位(84.4%)と大きく後退している。
パートナー校の鳥取大学と山口大学がそれぞれ1位となっており、昨年とランキングが入れ替わったような感がある。共同教育課程を実施する大学において、国家試験対策施策上での理由が何かあるのか、気になる結果だ。