●2020年度の売上高は前年度比-8.7%、純利益は同-14.7%と、コロナの影響で厳しい着地へ。
●2021年度の売上高は前年度比+8.4%、純利益は同+62.4%と、明確な業績回復を見込む。
●市場も大幅増益は織り込み済み、決算発表で一段の株高となるか各企業の業績見通しに注目
2020年度の売上高は前年度比-8.7%、純利益は同-14.7%と、コロナの影響で厳しい着地へ
国内では、今月下旬から3月期決算企業による決算発表が本格化します。コロナの影響が深刻だった昨年とは異なり、今回は多くの企業が新年度の業績見通しを公表すると思われ、市場の注目が集まっています。企業業績については、弊社でも金融を除く488社を対象とし、独自に調査を行っています。そこで、今回のレポートでは、弊社の企業業績見通しについて解説します。
はじめに、前年度、すなわち2020年度の着地を確認します。2020年度の売上高は484.3兆円、経常利益は28.3兆円、純利益は17.6兆円を見込んでおり、前年度比の伸び率は、順に-8.7%、-15.8%、-14.7%と、減収減益の予想です(図表1、図表2)。
直近の10-12月期決算では、通信、自動車、電機などの業績上振れが確認されましたが、通年度では、コロナの影響が色濃く残るとみています。
2021年度の売上高は前年度比+8.4%、純利益は同+62.4%と、明確な業績回復を見込む
次に、今年度、すなわち2021年度の業績見通しを確認します。2021年度の売上高は525.2兆円、経常利益は41.2兆円、純利益は28.5兆円を予想しています。この結果、前年度比の伸び率は、順に+8.4%、+45.8%、+62.4%の増収増益となり、企業業績は明確な回復が確認できると考えています。弊社はセクターを31に分類していますが、企業活動が正常化に向かうなか、幅広いセクターで増益が見込まれます。
2021年度の経常利益に関し、増益の寄与が大きいとみられるセクターは、自動車、鉄道、商社、自動車部品・ゴム、運輸(倉庫・物流)などです。これらのセクターは、特に前年度の減益が顕著だったため、その反動によるところも大きいと思われます。また、半導体製造装置、電子部品、ゲーム、医薬品なども、経常利益については前年度比で高い伸びが予想されます。
市場も大幅増益は織り込み済み、決算発表で一段の株高となるか各企業の業績見通しに注目
2021年度の業績見通しでは、売上高の伸びに対し、利益の伸びがかなり大きくなっていますが、これは限界利益率の上昇が主因と考えられます。限界利益率が高いと、売上高が増加したとき、限界利益(売上高から変動費を差し引いたもの)の増加割合が大きくなります。限界利益率が高いと思われるセクターは、鉄道、商社、海運などであり、売上高の反動増や市況改善が、2021年度の大幅増益に寄与するとみています。
なお、東証株価指数(TOPIX)の1株あたり予想利益(EPS)について、市場ではすでに今年度40%程度の増益が見込まれています。つまり、大幅な増益は織り込み済みであり、よほど強い業績見通しが示されない限り、決算を材料に、株価が一段高となるのは難しいということになりますが、今月下旬からの決算発表で、各企業がどのような見通しを示すのか、注目したいと思います。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年度の企業業績見通し』を参照)。
(2021年4月7日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト