●米大型経済対策は雇用計画と家庭計画という2本柱で構成され、規模は最大で総額4兆ドルに。
●一部報道通り増税3兆ドルなら財政悪化は避けられるが景気浮揚効果も一定程度相殺されよう。
●単純に考えれば建設関連、通信機器、半導体などに追い風、法案成立時期と増税規模に注目。
米大型経済対策は雇用計画と家庭計画という2本柱で構成され、規模は最大で総額4兆ドルに
バイデン米大統領は3月31日、「米国雇用計画(American Jobs Plan)」を発表し、今後8年間でおよそ約2兆2,500億ドルをインフラなどに投資する計画を明らかにしました。基本的には、バイデン氏の選挙公約が反映される内容になっており、輸送インフラの整備に約6,200億ドル、高速通信網などの整備に約6,500億ドル、介護支援に約4,000億ドル、製造業支援に約5,800億ドルがあてられています(図表1)。
なお、バイデン氏の大型経済対策は、今回発表された米国雇用計画と、「米国家庭計画(American Families Plan)」の2本柱で構成されています。米国家庭計画では、医療や子育て、教育などで困難を抱える家庭の支援に重点が置かれ、今月中に詳細が明らかになる見通しです。米国家庭計画の規模も2兆ドル程度とみられ、大型経済対策全体の規模は、最大で4兆ドルに達することになります。
一部報道通り増税3兆ドルなら財政悪化は避けられるが景気浮揚効果も一定程度相殺されよう
米国雇用計画の財源については、企業増税が想定されています。具体的には、法人税率の21%から28%への引き上げや、米多国籍企業に対する最低税率の設定などにより、15年間で2兆ドルを賄うことになります(図表2)。また、一部米紙の報道によれば、バイデン氏は経済対策の支出4兆ドルのうち3兆ドルは、法人と富裕層への増税で調達を考えている模様です。
この報道に基づけば、米国家庭計画の規模が2兆ドルの場合、1兆ドルは富裕層向けの増税、残りの1兆ドルは財政赤字で賄われることになります。その結果、米国雇用計画とあわせた経済対策全体で、財政赤字の拡大はかなり抑制され、「悪い金利の上昇」は回避される公算が大きくなります。その一方、増税の割合が増えることで、経済対策の景気浮揚効果は一定程度相殺され、「良い金利の上昇」にも影響が及ぶことになります。
単純に考えれば建設関連、通信機器、半導体などに追い風、法案成立時期と増税規模に注目
経済対策が米国の株式市場に与える影響については、財源としての増税と財政赤字の割合が現時点でまだ確定しておらず、正確な見極めは困難です。ただ、単純に考えれば、経済対策の相応の景気浮揚効果は、株式市場全体にプラスの要素です。また、施策を踏まえれば、建設素材や建設機械などの建設関連、電気自動車関連、通信機器、ソフトウェア、ネット販売、半導体、半導体製造装置などに追い風となります。
国内の株式市場については、建設機械、半導体製造装置、電子部品などのうち、米国向け売り上げの大きい企業が物色の対象になりやすいと思われます。なお、経済対策の今後については、今月中に公表が予定されている米国家庭計画も含め、関連法案がいつごろ成立し、どのような方法で支出が賄われるか(増税がどのくらいの規模になるか)が注目点であり、これらに市場の関心も集まるとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米大型経済対策が株式市場に与える影響について』を参照)。
(2021年4月5日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト