多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

コーヒー価格の高騰が生み出す悲惨な末路

実はこのときの価格の高騰の直接の原因は、ブラジルコーヒーの不作ではありませんでした。

 

ひと言で言えば原因不明ということになるのですが、コーヒーの需要と供給のアンバランスのような単純な図式では説明できない要因で価格が高騰したのは間違いありません。

 

有力な説として挙げられているのが、投機資金が流入してコーヒー価格を暴騰させたというものです。価格の変動を利用して利益を得る投資家は、価格変動が大きければ大きいほど利益も大きいのです。

 

1997年と言えば、アジア通貨危機が起こった年です。高めに設定されていたタイの通貨バーツに目をつけた欧米のヘッジファンドが大量の空売りを仕掛けたため、バーツは大幅な切り下げに追い込まれ、ヘッジファンドは巨額の利益を手にしました。

 

一国の通貨政策に影響を与えるほどの豊富な資金をもつ彼らなら、コーヒー市場の価格を操作することなどたやすいでしょう。

 

コーヒー価格が高騰すれば、コーヒー生産者は収穫したコーヒー豆を高く売ることができます。生産コストは変わらないので、価格が上がった分、利益は膨らみます。

 

これ自体は、コーヒー生産者にとって望ましいことではありますが、作為的に作られたと思われる価格高騰は、その数年後に悲惨な結果をもたらすことになったのです。

「コーヒー危機と貧困」目指すべき未来は

【あらゆる形の貧困を終わらせるために】

 

1.極度の貧困を世界から根絶する。

2.すべての面で各国が「貧困」と定義する人の割合を半減させる。

3.すべての人が適切な社会的保護を受けられるようにする。

4.すべての人が、経済的手段、基礎的サービス、土地などの財産の所有、相続、自然資源、適切な新技術、マイクロファイナンス等の金融サービスに平等にアクセスできるようにする。

5.貧困層や脆弱層※1が、気候変動による災害や、経済・社会・環境面での惨事に晒される危険性を減らし、人々の強靱性(レジリエンス)※2を高める。

 

a.すべての形態の貧困を終わらせるために開発途上国に対して開発協力を行なう。

b.貧困層やジェンダーに配慮した適正な政策を構築し、貧困撲滅のための投資を加速させる。

※1.脆弱層(ぜいじゃくそう):傷つきやすい人々全般を指す。

※2.強靱性:病気や失意などからすぐに立ち直り、元気になること。

 

池本 幸生
東京大学東洋文化研究所教授

 

José.川島 良彰
株式会社ミカフェート 代表取締役社長

 

山下 加夏
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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