息子は母親のそばから、なかなか離れない
母親は息子が好き、娘は介護要員
おしなべて世間の母親は、同じ子供でも娘より息子の方が好きだ。いくら同じお腹を痛めた子でも、かわいいのは男の子のようだ。母親と言えども女性なので、異性の方が好きなのだろう。異性が好きなのは人間の本能にちがいない。そうでないと種が絶えてしまう。
母は息子と話すときは、やさしい声を出す。そんなとき、わたしは心の中で「男好きね」と嫌味を言う。こういう見方をするから娘は嫌われるのだろう。
息子はいつも「なに? お母さん」と静かに話に耳を傾けるが、娘のわたしは「えっ。なに? それで?」とそっけない。
男性にもいろいろいるが、押しなべて男性は静かでやさしい動物だ。それに対し、女性はちゃかちゃかしていてうるさい。
30代の未婚男性に聞いてみたところ「言われてみればそうですね。うちにも姉と妹がいますが、母は僕に対しては、別扱いですね」と笑った。今の時代でも変わらないことに、わたしは少なからずショックを受けた。母子関係は、進化してないのか。
「もし、川で家族がおぼれていて、ひとりしか助けられないとしたら誰を助ける?」こんな心理テストがあったが、間違いなく母親は、夫でも娘でもなく息子だろう。
娘は物心がつくと、お相手を見つけてさっさと家を出ていくのが普通だが、息子は母親のそばから、なかなか離れない。母親も息子を離さない。このゆがんだ親子関係が世の中を騒がす家族殺人や切りつけ事件、引きこもり社会現象を生んでいると言ったら言い過ぎだろうか。わたしの周りにも、母息子の密着親子が普通にいる。その場合、息子が働いていないことが多い。
本当は息子の世話になりたい
「母親は息子が好き」の話を親しい女友達にしたところ、うちもそうよという返事が返ってきた。兄と彼女の2人兄弟。95歳で亡くなった母親の世話をしたのは、シングルの彼女だった。母親に朝ご飯を食べさせ、ベッドに寝かせ、お昼を用意して出勤。この生活を何年もやっていた。母親としては、感謝しても足りない存在の娘であるはずだが。
そんなある日、母親が大声で彼女に言ったそうだ。認知が入っていたのかどうかはわからないが、彼女はショックで立ちあがれなかったと話す。