最低限知っておきたい、不動産業界の「指標」
次に、不動産投資の世界でよく使われる指標について理解していきましょう。
最初は言葉の意味だけ覚えても、それが投資するに値する数値なのかどうか、なかなか判断できないかもしれません。しかし、間取り図や物件情報を見て、現地調査をするうちにジャッジのスピードは自然と早くなるものです。それでは1つひとつ、順に解説しましょう。
●「表面利回り」「実質利回り」
まず、よく耳にするのが「利回り」です。投資した元本に対する収入の割合を指しますが、利回りには次のような種類があります。
① 表面(グロス)利回り
最も一般的に使われる利回りです。これは購入価格に対する年間賃料の割合で、「表面利回り」「グロス利回り」と言われます。注意したいのは、これには購入時の諸費用や税金、管理費などが含まれていないことです。全体のスケールを見る大まかな目安になります。
不動産会社の広告に記載される利回りの多くは、この表面利回りになります。
②実質(ネット)利回り
実質利回りでは、物件の維持費を考慮して計算します。「ネット利回り」と言われることもあります。これは購入時の仲介手数料や印紙代、登録免許税、司法書士費用、不動産取得税なども含めて計算します。また、家賃収入は、年間の家賃収入から管理費や固定資産税、都市計画税、火災保険料、修繕費、共用電気代、清掃代などの運営費を引いた金額で計算します。
物件の良し悪しを比較検討するには、この実質利回りで検討することがポイントです。
ちなみに、実質利回りの計算の際、どこまでを経費や運営費としてみなすか、不動産会社や情報サイトなどによって異なりますので、よく注意してチェックするようにしましょう。
③想定利回り
周辺の家賃相場で物件が満室になった前提で計算された不動産会社が提示するのが「想定利回り」です。想定通りにうまくいくのかどうか、近隣物件の入居状況などをよくチェックする必要があります。
利回りで注意したいのは、1棟ものの大型物件ともなると、エレベーターや共用部のメンテナンス費用がかさんで、表面利回りと実質利回りの差が大きく開くことです。これに対してワンルームマンションの場合、管理費や修繕費が明確であり、運営費に大きな差がないため、利回りの予測が立てやすいという特徴があります。
●キャッシュフローの計算
キャッシュフローとは、収入から支出を引いて残ったお金の流れを意味します。特に不動産投資の場合、家賃収入から金融機関へのローンの返済額や税金を支払ったあと、手元に残るお金のことをいいます。キャッシュフローの計算は、次の手順で行います。
①税金=課税所得(A)×税率
課税所得=年間の家賃収入-(運営費〈管理費+固定資産税+都市計画+火災保険料+修繕費+共用電気代+清掃代など〉+返済金利+減価償却費)
②キャッシュフロー=年間の家賃収入-運営費(管理費+固定資産税+都市計画+火災保険料+修繕費+共用電気代+清掃代など)-返済金(返済元金+返済金利)-税金(所得税+税金)
所得税の税率は下記図表2の通りです。
たとえば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。
700万円×0.23-63万6000円=97万4000円
※平成25年から平成49年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとになります。
●ROI
不動産投資の投資効率を上げるには、レバレッジ(てこの作用)を効かせることが重要です。その投資効率をどう判断するか?指針となる数値がこれから解説するROIです。「Return On Investment(リターン・オン・インベストメント)」を省略して「ROI」(アール・オー・アイ)と呼ばれます。投資した自己資金に対する年間のキャッシュフローの割合を指します。
ROI=年間キャッシュフロー÷最初に支払った自己資金×100
仮に、キャッシュフローが年間400万円だとします。最初に支払った自己資金が1000万円だと、
400万円÷1000万円×100=40%
ROIは、40%です。
自己資金が半分の500万円とすると、ROIは次のように倍になります。
400万円÷500万円×100=80%
つまり、自己資金が少なくなればなるほど、投資効率を示すROIは高くなるわけです。金融機関からの融資を利用して、レバレッジをかけることで、投資効率はよくなるということがROIからわかります。
●入居率、空室率の算出方法
入居率・空室率をより正確に理解するには、以下の計算方法を理解しておきましょう。なお、入居率は100%から空室率を引いたものになるため、ここでは空室率の計算式を説明していきます。
①ある特定の時の空室率
空室率=空室部屋数÷総戸数
一般的にはこの計算式が使われます。ただし、特定した時点に限られているため、時系列で見ていなかければ、正確な空室率を見ることはできません。
②年間の稼働日に対する空室率
空室率=(空室数×空室期間)÷(全体の室数×365日)
③年間の総賃料に対する空室率
空室率=空室による未収入賃料÷年間総賃料
この総賃料に対する空室率を参考にすることがポイントです。
●減価償却と構造ごとの耐用年数
減価償却費とは不動産の建物に関連する経費に計上できます。
わかりやすく言うと「モノの劣化代」にあたります。モノには耐用年数があります。減価償却費を計算するために、税法によって、モノの耐用年数が決められていて、建物も構造ごとに耐用年数が決められています(図表6)。
税法では、この耐用年数に応じて償却率が決められています。たとえば、1億円の新築建物の減価償却費を構造別に計算してみましょう。
RC :1億円×償却率0.022(耐用年数47年)=減価償却費220万円/年
重量鉄骨:1億円×償却率0.030(耐用年数34年)=減価償却費300万円/年
木造 :1億円×償却率0.046(耐用年数22年)=減価償却費460万円/年
木造はRCの倍以上の減価償却費を1年間に計上できますが、気をつけたいのは計上できる期間です。RCなら220万円の減価償却費を47年間計上できますが、木造なら460万円の減価償却費を22年間しか計上できません。
同じ1億円の建物でも、RCは47年、重量鉄骨は34年、木造は22年間かけて経費化していくので、耐用年数が短い建物ほど、年間の減価償却費が多くなり、利益が減ります。とはいえ、その分、税金が減り、税引き後キャッシュフローは多くなることになります。
こうした数字のカラクリもしっかりと理解した上で、不動産投資を進めていきましょう。
オスカーキャピタル株式会社
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