「PCR増で、医療が崩壊する」と日本のメディアは紹介するが…

臨床医としての力をつけるには、どうすればよいか。現役内科医である筆者は、1つとして医学論文の発表を強く推奨している。一般的に、医学論文は「大学に所属する医師が書くもの」という認識が強い。大学所属ではない医師が書き続けるべき理由、メリットとは?

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論文で身に付く「臨床医の力」と「世界の医学常識」

どうすれば臨床医としての力をつけることができるか。私は、診療して、調べて、書くことを黙々と繰り返すしかないと考えている。このような作業を通じて、頭が整理される。臨床医学の現状を大きな流れの中で捉えることができれるようになれば一人前だ。

 

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医師の場合、「書く」ことのメインは英文で医学論文としての発表することだ。論文が学術誌に掲載されるためには、査読者が評価し、最終的に編集長が「掲載の価値がある」と判断しなければならない。専門家の評価にたえるものでなければならず、独りよがりな意見は相手にされない。

 

たとえば、「新型コロナウイルス対策で、PCR検査を増やせば、偽陽性が増えて、人権を侵害する」や「PCRを増やせば、医療が崩壊するから、制限すべきだ」などの意見は、日本のメディアで紹介されることはあっても、学術誌では相手にされない。論文を書くことで、世界の医学の常識を身に付けることができる。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

論文本数は年々増加…大学にいないほうが生産性大

多くの医師は「論文は大学に所属する医師が書くもの」とお考えだろうが、そんなことはない。むしろ大学にいないほうが書きやすい。

 

2020年の医療ガバナンス研究所の英文論文の発表結果がまとまった【図表】。

 

作成:医療ガバナンス研究所 山下えりか 参照:医療ガバナンス研究所、PubMedによる
【図表】 作成:医療ガバナンス研究所 山下えりか
参照:医療ガバナンス研究所、PubMedによる

 

我々は、2006年に東京大学医科学研究所で活動を開始してから、今年で16年目になる。2016年に独立して、港区高輪に医療ガバナンス研究所を立ち上げた。現在、ナビタスクリニックなどでの診療に加え、東日本大震災の被災地の医療支援、ワセダクロニクルと共同での製薬マネー研究、中国やネパールなどとの共同研究を進めている。

 

2020年に発表した論文は100報。過去最高だった。東京大学医科学研究所在籍中は年間20報程度だったが、独立後、2018年を除き論文数は毎年増加している。

 

昨年は新型コロナウイルスが流行したことが大きかった。この問題について23報の論文を発表することができた。

 

東京大学在籍中より生産性があがったのは、手続きや間接業務がなくなり、活動しやすくなったためだ。私は公的な研究費を受け取っていないが、研究に投資できる資金は東京大学在籍中より増えた。

医学生への「執筆指導」によって中堅医師も成長

このような論文を書く作業を繰り返すことで、人材は育つ。昨年で特記すべきは、大学生のインターンが多数の論文を書き上げたことだ。東北大学の村山安寿君、スロバキアのコメニウス大学の妹尾優希さん、秋田大学の宮地貴士君、東京大学の小坂真琴君、千葉大学の原田夏與さん、慶應義塾大学の谷悠太君などが筆頭著者として発表した。もっとも多い村山君の論文数は3つだ。

 

村山君は『FACTA』2月号でも、医療ガバナンス研究所の尾崎章彦医師との共著『スクープ!「製薬マネー」知られざる実態』という文章が掲載された。これは、彼らがワセダクロニクルと共同で進めてきた製薬マネー研究の成果をまとめたものだ。詳細は22報の英文論文として発表している。

 

もちろん、学生がテーマを見つけて、自分で書き上げる訳ではない。指導者がいて、指示通りにするだけだ。論文も殆どは指導医が書くといっていい。このような指導を受けて、学生は「書き方」を身に付ける。

 

指導は、中堅医師にとっても貴重な経験になる。実際に論文を書く若手の「選手」と、彼らを指導する中堅医師の「コーチ」では求められる役割が違うからだ。優秀な医学生や研修医は、30歳を超えると失速する人が多い。それは後進を指導する「コーチ」としての能力がないからだ。医学知識や論文を書く力だけでなく、コミュニケーション力や指導力が必要だ。

 

医療ガバナンス研究所で、「コーチ」を務めるのは谷本哲也、瀧田盛仁、坪倉正治、尾崎章彦医師たちだ。

 

谷本医師は「谷本勉強会」、坪倉医師は福島県立医科大学放射線健康管理学講座でも、後進を指導している。谷本勉強会は10年を超し、そのノウハウは『生涯論文! 忙しい臨床医でもできる英語論文アクセプトまでの道のり』(金芳堂)としてまとめた。2020年、医療ガバナンス研究所の論文数が増加したのは、このような指導層が成長し、「コーチ」としての力をつけたことが大きい。

 

「コーチ」としての訓練の必要性は、臨床教育ではすでに言い古されており、確固たるシステムが確立している。ところが、臨床研究では、ほとんど議論されることがない。医師の訓練には臨床経験と臨床研究が両輪だ。後者のシステムについても、議論が必要だ。医療ガバナンス研究所は、試行錯誤を繰り返しながら、現代にあった指導者養成方法を確立したいと考えている。ご興味のある方は、是非、筆者までご連絡いただきたい。共同研究、大歓迎である。

 

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上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

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内科医
医療ガバナンス研究所理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

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