前回は、隣接業種内でM&Aを行うメリットとデメリットについて取り上げました。今回は、同業界・隣接業界にいる同一業種でM&Aを行うメリットについて見ていきます。

生産能力の拡大が見込める同業界・同一業種とのM&A

前回は、売却先のポイントとして製造ピラミッドの縦軸を説明しました。今回は、横軸について見ていきます。

 

工程の前後が縦軸だとすると、同じような製造工程や類似する製品を製造している企業が横軸ということになります。横の関係性によるM&Aは水平型と呼ばれることもありますが、これによる主なメリットは、生産能力の増強と何よりも販路の拡大です。

 

●同業界の同一業種

横軸でまず考えられる相手は、同じ業界にある同一業種です。

 

例えば大手自動車メーカーのトヨタ系列でプレス金型の設計・製造をしている中小製造業があるとしましょう。当然この1社でトヨタの系列で使われている全ての金型を設計・製造しているわけではありません。同様の業種を営む会社は数多くあり、その規模・技術力等も様々ですが、M&Aの対象になる会社として、まずはピックアップできるのではないでしょうか。

 

もちろん同じ系列内での企業だけでなく、違う大手自動車メーカー系列のプレス金型企業とのM&Aを模索することも重要です。例えばトヨタではなく、ホンダの製造ピラミッドで同じ業種を担っている企業です。この場合には、新たな大手系列のピラミッドに入れることで一社系列の取引リスクがなくなり、企業としての事業基盤が安定するというメリットが受けられます。

 

生産能力の拡大と新たな販路の拡大で、系列内でのM&A以上に双方にメリットのあるM&Aが成立する可能性が大きいと考えられます。

販路拡大が見込める隣接業界・同一業種とのM&A

●隣接業界の同一業種

横軸でお勧めしたいのは隣接業界の同一業種です。例えば自動車業界と電気機器業界のように業界が違っても、類似部品や同様の加工工程をもつ部品を製造している企業はあるからです。

 

業界を跨ぐことで売り手側の抵抗感は薄くなり、買い手側にとっては生産能力の増強の他にも、新しい業界へと進出し販路を拡大するきっかけが手に入ります。また、同じ製造業でも違う業界となると意外と知らないことも多く、技術に差があるということも考えられます。

 

自動車業界は日本が世界に誇るレベルですから技術レベルも効率化という点でも自動化という点でも最先端を走っているでしょう。しかしそれを他の業界でも同様のレベルで行えているかと言われれば難しいところもあるのではないでしょうか。

 

自動車業界の技術をそのまま別の業界で活用することはできないかもしれませんが、違うやり方をしていることは十分に考えられます。別の業界のやり方を参考にすることで、業界に新しい技術や風を吹き込む可能性もあります。そういった化学反応が期待できるというのも他業界相手のM&Aのメリットと言えるでしょう。

本連載は、2016年4月27日刊行の書籍『中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

浅岡 和彦

幻冬舎メディアコンサルティング

自分が高齢になってもその技術や従業員を守っていきたい、自社の技術を信頼してくれる取引先に迷惑をかけたくない──これは中小製造業の社長に共通する願いでしょう。 しかし、社長の思いに反し、多くの会社がいま存続の危機…

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