前回は、買い手にとって魅力のある会社について説明しました。今回は、業績が振るわない中小製造業を高値で売却するためのポイントを見ていきます。

財務面や投資リスクがあっても買い手がつく企業はある

財務面や投資リスクはあくまで一般的な指標に過ぎません。これに当てはまらなくても売れた企業はたくさんありますし、買い手側がどこに価値を感じるかというのは業界動向や企業経営の状態によって変動するものなので一概に言い切れることではありません。

 

実のところ最も大事なのは、相乗効果があるかどうかということです。業績があまり振るわない企業でも、不動産が多くてリスクが高いと思われる企業でも、買い手側が手持ちの技術や販路と合わせると高い効果が見込めるような企業は魅力的に映るからです。

 

実際に中小製造業で考えると、一社取引や一品生産のところが多く、工場などの不動産によって株価も高くなりがちなので、内実はM&Aに適しているとは言い難いものです。それが製造業のM&Aが進まない理由になっていることは確かです。

得られる相乗効果を適切な相手に最大限アピールする

また、製造業においては業界的に精通しているM&Aのアドバイザーが少ないため、誰にどうやってアピールするかということが中々考えられてきませんでした。

 

例えば製造業だからといって、樹脂会社にメッキ会社譲渡の話を持っていっても、そこに何が見い出せるのかがはっきりしませんので魅力を感じることはありません。ところが金属系のプレス製品を扱っているところにメッキ会社譲渡の話を持っていくと、プレスの次にメッキを入れる工程が入ることがあるので、外注に出している工程を自社で行うことができるようになるメリットが生まれます。そういう相乗効果が見込めて初めて、製造業のM&Aの話が具体性を持つことになるのです。

 

つまり、中小製造業を高値で売却するコツは、得られる相乗効果を適切な相手に最大限にアピールすることに集約されます。財務状況やリスク要因だけでなく、相乗効果で高い価値を感じてもらうことができれば、購入に繋がる確率が高まりますし、売り手にとって有利な条件での売却も見えてきます。

 

中小製造業をM&Aで手に入れることで、高いメリットや相乗効果が見られるのは以下のような「売却先のポイント」に当てはまる相手です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

【図表 マッチング企業の探し方】

本連載は、2016年4月27日刊行の書籍『中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

浅岡 和彦

幻冬舎メディアコンサルティング

自分が高齢になってもその技術や従業員を守っていきたい、自社の技術を信頼してくれる取引先に迷惑をかけたくない──これは中小製造業の社長に共通する願いでしょう。 しかし、社長の思いに反し、多くの会社がいま存続の危機…

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