2021年2月分鉱工業生産指数・速報値について

（鉱工業生産）

●鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は▲2.1％と、2ヵ月ぶりに低下した。季節調整値の水準は95.7で、20年12月の93.8以来の低い水準になった。新型コロナウイルス感染拡大前の20年1月の99.8と比べるとかなり低い。2月分は、1月分の前月比+4.3％の大幅上昇の反動減が出た。最も低下寄与が大きかった自動車工業では、半導体不足の影響や、2月13日の福島県沖地震による部品供給停止の影響が出た。前年同月比は▲2.6％で17ヵ月連続の低下となったが、9月分～2月分は6ヵ月連続マイナス幅が1ケタになった。

●2月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、3業種が前月比上昇、1業種が横這い、11業種が前月比低下となった。生産用機械工業、輸送機械工業（除.自動車工業）、電子部品・デバイス工業が上昇に寄与したが、プラスチック製品工業が横這い、自動車工業、電気・情報通信機械工業、化学工業（除.無機・有機化学工業・医薬品）などは低下に寄与した。

●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、今回の21年2月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっている。

●先月発表された製造工業予測指数2月分は前月比+2.1％上昇する見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲0.4％になる見込みであった。90％の確率に収まる範囲は▲2.1％～+1.3％の見込みであった。実際には、鉱工業生産指数の前月比が▲2.1％の低下になったが、これは製造工業予測指数を下回り、試算値の下限と同じ伸び率である。

●2月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.5％と2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲3.5％で17ヵ月連続の低下となった。

●2月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.0％と3ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲9.6％と10ヵ月連続の低下となった。

●2月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+1.0％で、2ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は▲4.8％と5ヵ月連続の低下となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10～12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10～12月期、出荷の前年同期比が▲6.5％、在庫が同+1.2％、20年1～3月期、出荷の前年同期比が▲5.2％、在庫が同+2.9％と、どちらも「在庫調整局面」であった。20年4～6月期は、出荷の前年同月比が▲19.9％、在庫が同▲3.4％と、出荷は大幅に減少したものの在庫調整がさらに進んだ。20年7～9月期は、出荷の前年同期比が▲13.5％、在庫が同▲5.7％と、引き続き「在庫調整局面」の状態にあったが、10～12月期では出荷の前年同月比が▲3.3％、在庫が同▲8.4％、そして21年1～2月分では出荷の前年同月比が▲4.3％、在庫が同▲9.6％と、20年4～6月期以降在庫が減少する中で、在庫調整がかなり進んで「意図せざる在庫減局面」になっている。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると3月分は前月比▲1.9％の低下、4月分は前月比+9.3％の下降の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、3月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.4％になる見込みである。製造工業予測指数より良い数字になることは珍しい。90％の確率に収まる範囲は▲3.1％～+0.3％の上昇になっている。

●先行きの鉱工業生産指数、3月分を先行き試算値最頻値前月比（▲1.4％）で延長すると、1～3月期は96.0、前期比は+1.5％の上昇になる。また3月分を製造工業予測指数前月比（▲1.9％）で延長すると、1～3月期は95.8、前期比は+1.3％の上昇になる。1～3月期は3四半期連続の前期比上昇が見込まれる。

●先行きの鉱工業生産指数、3月分を先行き試算値最頻値前月比（▲1.4％）で延長したあと、4月分を製造工業予測指数前月比（+9.3％）、5.6月分を横這いで延長すると、4～6月期の前期比は+7.5％の上昇になる。また3月分を製造工業予測指数前月比（▲1.9％）で延長したあと、4月分を製造工業予測指数前月比（+9.3％）、5.6月分を横這いで延長すると、4～6月期の前期比は+7.1％の上昇になる。4～6月期は4四半期連続の前期比上昇が期待される状況だ。

（2月分の景気動向指数・速報値予測）

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.3程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差プラスに、最終需要財在庫率指数（逆サイクル）、鉱工業生産財在庫率指数（逆サイクル）、新規求人数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナスになると予測した。

●2月分の一致CIは前月差▲1.3程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差はプラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の5系列が前月差マイナスになると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断が2月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に「上方への局面変化」から上方修正される条件は「原則として3ヵ月以上連続して3ヵ月後方移動平均が上昇かつ当月の前月差の符号がプラス」になることである。しかし、3ヵ月後方移動平均は2月分で8ヵ月連続して上昇するものの、一致CIの前月差がマイナスになりそうなので、「改善」への上方修正は先送りされよう。

●2月分の先行DIは66.7％程度と景気判断の分岐点の50％を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数（逆サイクル）、鉱工業生産財在庫率指数（逆サイクル）、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がプラス符号に、新規求人数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になると予測した。

●2月分の一致DIは62.5％程度と景気判断の分岐点の50％を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列がプラス符号になり、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の3系列がマイナス符号になると予測した。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください（見当たらない場合は関連記事『2021年2月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照）。

（2021年3月31日）

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト