「資産寿命」を延ばすために退職金で気をつけたいこと
それらに加えて、今回「資産寿命を延ばす」という観点から考えた場合、追加的に注意をしておいた方がいいことについて、いくつか述べたいと思います。
1.赤字補塡に退職金を使うのは禁物
まずは公的年金の範囲内で生活するということを考えるべきです。夫婦二人の場合のモデル年金額である22万円あまりで生活できるようにすることが第一です。
それで足りないのであれば、足りない分はできるだけ働いて補うべきです。膨れた生活費を戻すのは結構大変です。まずは年金収入の範囲内で生活し、退職金からの補塡はせずにできるだけ温存すべきでしょう。
2.退職金運用プランには注意
銀行や信託銀行などで退職者向けに普通よりもかなり高い金利の付く預金を売り出していることがありますが、これに飛びつくのも考えものです。
そもそもそんな特別に条件の良い預金金利を出しているのは退職金を取り込みたいためであって、そんな有利な金利が今後もずっと続くと考えない方がいいでしょう。よく見ると、高い金利は当初3ヵ月ぐらいの期間のものがほとんどです。
次に満期になった時に手数料の高い投資信託を勧められたり、そもそも最初の段階で投資信託とセットになったりしていることもあります。細かく書いてある説明の文字も含めて十分に吟味することが必要です。
3.退職金を元手にお店をオープン、は要注意
定年後に夢を実現するということから、こういうプランを考えている人もいます。退職後にお店を開くこと自体は良いことだと思います。ただ、そのためには計画をしっかり持つことが必要です。
手元にまとまったお金があるからという理由だけで収益性や将来のビジネス展開も考えずにお店を開くのは危険です。しかも退職金を注ぎ込んで無計画にやってしまうと、気が付けばあっという間に無くなってしまうということも起こり得ます。
4.退職金への過信は禁物
項目の最後の3つは、いずれも退職金を過信してしまって起こりがちなことで、よく考えずに使ってしまった結果、後で資金に窮することが起こりかねないという例です。
可愛い孫や楽しい趣味にお金を使うのは良いですが、程度を考えましょう。当たり前ですが、お金は使えばなくなります。
退職金は打ち出の小槌ではありません。また、住宅ローンの残債を返済してしまうのは悪いことではありませんが、手持ちの現金に余裕があるならともかく、そうでないのなら急いで返済して手元に現金がなくなってしまうのはあまり好ましくありません。
それに今は史上空前の低金利なので、まだ返済期間が長いとか、金利が高いというのであれば、借り換えを優先しても良いと思います。
さらに理想を言えば、退職金は一時金で受け取るよりも年金で受け取る方が良いこともあります。いずれにしても退職金の使い方や運用には十分注意をしておくことが資産寿命を延ばす上では重要なことだと思います。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】