将来の収支を試算するために保険会社がよく実施する「ライフプランシミュレーション」。その結果を基に「今のままだと何歳で貯蓄が底をつくので、今のうちに保険に入りましょう」というセールストークを聞いたことがある人は多いと思います。しかしそのシミュレーションには、ある大切な要素が欠落しています。今回は、ライフプランを考える上でのポイントを解説します。※本連載は、大江英樹氏の著書『資産寿命 人生100年時代のお金の「長寿術」』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「ライフプランシミュレーション」が活用される場面

資産寿命を延ばすために大事なことが収支、なかでも支出管理が大事という話になると、いつも話題に出てくるのは「ライフプランシミュレーション」です。昔、保険会社の営業レディが職場に出入りしていた頃は、あちこちでこのライフプランシミュレーションシートが配られていました。

 

オフィスでの保険の営業(※写真はイメージです/PIXTA)
オフィスでの保険の営業(※写真はイメージです/PIXTA)

 

年収や年齢、家族構成などを記入させられて、営業員が持って帰り、やがて結果を見せてもらうと、「あなたはこのままいくと70歳で貯蓄が底をついてしまいます。だから今のうちに保険に入りましょう」といったセールストークで加入させられるという光景が繰り広げられてきました。

 

これは保険会社だけではなく、他の金融機関でも似たようなことが行なわれていました。

 

さすがに最近は、職場に営業員が入り込んでくることも無くなりましたので、こんな光景は見なくなりました。それにこういうシミュレーションは今ではネットで簡単にできるようになってきましたので、これを営業ツールに使うということは少なくなってきています。

 

それでも金融機関の営業員と対面で話をしたり、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談をすると、相変わらずライフプランシミュレーションを使って説明を受け、その結果にしたがって、金融資産を入れ替えたり、追加購入したりするケースはあるようです。

ライフプランで大事なのは「自分の頭で考えること」

筆者はこのようなライフプランシミュレーションとかキャッシュフローシミュレーションは、不要だとは思いませんが、さりとてぜひとも必要だとも思いません。

 

将来の収支について考えることは大事ですが、アプリとかソフトで入力して結果のみがアウトプットされるような仕組みは、実はあまり役に立ちません。なぜなら、先のことは誰もわからないからです。今の時点で予測してみても将来、状況はいくらでも変わってきます。

 

今後の収支を考える上で大事なことは予測ではなく、Projection(投影)なのです。予測はあくまでも不確実なものに過ぎません。今の時点で将来の予測を立ててそれを絶対視しては間違いかねません。

 

大事なのは、今の状況が今後10年、20年続いたとして、それが健全な収支になるかどうかを検証すること、すなわち現在の状況を未来に投影することです。だからプロジェクション(投影)なのです。さらに言えば、その状況が変化していないかを定期的に見直すことが重要なことです。

 

ライフプランを考える上で何よりも大事なことは「自分の(自分たちの)頭で考えること」です。そして状況の変化に応じて再び考え直すことも大切です。

 

シミュレーションのアプリやソフトに入力すれば終わり、というものではありません。もし収支について考えるのであれば、そんなソフトを使うよりもむしろエクセルに手入力でも、ノートに手書きでも良いので、自分で考えてやってみることから始めるべきです。

 

金融機関の営業員やFPが作成したライフプランシミュレーションを頭から信用するのは危険ですからやめるべきです。

 

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