日本人の平均寿命が延びているなか、これまで築き上げた資産がなくなるまでの期間、すなわち「資産寿命」が短いと、自分のやりたいことができません。今回は、金融機関の将来不安を煽るようなセールストークを信じて、安易に投資を始めてはいけない理由について解説します。※本連載は、大江英樹氏の著書『資産寿命 人生100年時代のお金の「長寿術」』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「投資をすればお金が増える」と安易に考えるのは誤り

(※写真はイメージです/PIXTA)
株式投資スクールで学ぶことも大切だが…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

世の中では「公的年金だけでは不安だから退職金を資産運用で増やして老後に備えよう」ということがまことしやかに言われています。特に金融機関は盛んにこういうことを言います。

 

しかしながら、これはあきらかに「不安煽り型商法」です。実際、「2000万円問題」が話題になって以降、金融機関での口座開設が増加したり、株式投資スクールのようなところに申込者が急増したりしていることからも「投資で資産を増やそう」という主張は、老後不安を持つ多くの人に対してはかなり効果があると言って良いでしょう。

 

筆者は金融機関がそういうセールストークで投資を勧めてくること自体が別に悪いことだとは思っていません。なぜなら彼らも商売ですから、株や投資信託などの金融商品にたくさん投資してもらうことで、自社の収益を最大化しようとするのは当然だからです。そうでないと株主から文句を言われることになります。

 

でもいくら金融機関が勧めてこようが、それを判断するのは顧客です。自分にとって投資が必要かどうかを判断し、必要ならすれば良いし、不要であればしなければ良いだけです。

 

大事なのは①何のために投資をするのか? ②投資の本質とは一体何なのか? そして③必要なら投資は具体的にどうすればいいのか? を自分で考えることです。

 

これは言うまでもないことですが、投資の結果は不確実なものです。先の見えない不確実なものに自分のお金を委ねるのであれば、それなりの準備や覚悟も必要です。投資は魔法の杖ではありませんから、投資さえすればお金が増えると考えるのは間違いです。

 

したがって、資産寿命を延ばすための手段としては、①できるだけ長く働いて収入を得るようにする、②収支をしっかり管理する、③年金などの社会保険制度を正しく理解して利用する、という3つが基本なのです。

 

それに加えて、自分である程度のリスクを取れる覚悟があるのなら、初めてそこで投資や資産運用を考えればいいのです。順序を間違えてはいけません。

 

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