日本人の平均寿命は延び、「人生100年時代」と言われています。しかし、これまで築き上げた資産がなくなるまでの期間、すなわち「資産寿命」が短いと、自分のやりたいことができません。今回は年金不安が騒がれるなか、老後生活を支える「公的年金」の本質に迫ります。※本連載は、大江英樹氏の著書『資産寿命 人生100年時代のお金の「長寿術」』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

公的年金の本質は「貯蓄」ではなく「保険」

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

資産寿命を考える上では、年金のことを避けて通るわけにはいきません。老後の生活をお金の面で支える大きな柱は何と言っても年金、つまり国から支給される「公的年金」だからです。

 

もちろん公的年金さえあれば何の問題もないとは言いませんが、少なくともまず考えておくべき老後生活の基本はやはり公的年金であることは間違いありません。

 

そんな大切な公的年金ですが、残念なことに多くの人は年金について間違った知識やイメージを持っています。これはマスコミの責任が大きいのですが、金融機関等も自社の金融商品、保険や投資信託を売り込みたいがため、余計に年金不安を煽り立てる傾向があります。

 

ここでは、そんな年金の間違った知識を一つひとつ検証していきたいと思います。

 

最初は「年金の本質」についてです。多くの人は、年金の仕組みを自分で払ったお金がどこかでプールされて運用され、老後に支払われるものだと勘違いしています。つまり、年金が貯蓄のような金融商品だと思っている人が多いのです。

 

でも年金の本質は「貯蓄」ではなく、「保険」なのです。保険というのは何か不測の事態が起こった時にそれによって経済的に困らないようにするためのものです。では年金はどんな不測の事態に対してカバーしてくれるのでしょうか。

老後の「3つの不測」に備えるには「公的年金」が有効

最大の不測のできごとは「長生きすること」です。こう言うと多くの人は「不測って言ったって長生きするのは幸せなことじゃないか」と思うでしょうが、長生きして幸せなのは健康でお金がある場合の話です。

 

長生きした結果、お金が無くなってしまうほど恐ろしいことはありません。人生の終盤、仕事も無くなり、身体も動かなくなった時にお金が無いというのは考えただけでもぞっとします。

 

でも人間は誰でも年を取ると働けなくなります。つまりどこかの時点で収入が途絶えてしまうことははっきりしているのです。ところが公的年金の給付は終身です。つまりどれだけ長生きしても死ぬまで貰えるのです。これはとても助かります。言わば死ぬまで貰える「所得補償保険」のようなものです。

 

次に二つ目は病気や怪我で自分が障がい者になってしまうというケースです。これも状況によっては働けなくなってしまうかもしれません。そのために公的年金では障がい者となった場合に「障害年金」が受け取れます。こちらも給付は終身です。

 

三つ目は自分が死んでしまった場合です。この場合は残された家族に経済的な不安が生じますので、「遺族年金」が支給されます。

 

つまり公的な年金に加入しているということは、民間保険会社が提供している所得補償保険、傷害保険、そして生命保険に該当する保険に入っているのと同じことなのです。日本は国民皆保険制度ですから、原則は全員がこれらの保険に入っており、様々な不幸に対応できるようになっています。

 

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