医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

参観日、運動会、文化祭などの学校行事も不参加

実家の援助がない場合

 

2人の子どもがいる女性産婦人科医Kさんは、毎朝4時45分に起床し、次男(高校生)のお弁当を作り、送り出しています。その後6時45分に自宅を出て、地下鉄と徒歩で約1時間。8時前に病院に着くと、入院患者の回診を行ない、9時頃から外来か手術に入ります。外来の場合は17時まで切れ目なく行ない、昼食はその合間に10〜15分間でお弁当か食堂ですませます。

 

通常、手術は1日に3件ほど予定に入っており、長ければ3時間くらいの施術になります。17時になると、患者を回って明日の予定を話したりカンファレンスを行なったりして、通常は18時半から19時には退勤します。中間管理職であるKさんは夜、会議へ出席することもあり、そういう時は帰宅が遅くなります。また緊急手術が残っていればそのまま夜勤に入り、退勤時間は未定となるハードスケジュールになります。

 

当直は月に2回。当直は、朝に出勤すると次の日の朝が来ても帰れず、そこから1日の仕事をこなして36時間ほど働き続けなければなりません。45歳以上になると当直をしなくなるのが一般的ですが、Kさんの病院は難しい患者も多く、当直に入らざるを得ないそうです。

 

さらに、自宅にいても何かあったら病院に駆けつけなければならない「呼び出し当番」があり、月に2、3回担当しますが、少なくとも月に1、2回は実際に呼ばれるそうです。

 

1週間のうち、Kさんがお弁当以外で食事を作るのは土日に1回だけ、町の診療所で働いている夫が平日に1回担当し、それ以外の日は塾や部活動で帰りが遅くなる次男が惣菜を買って食べています。就寝は23〜0時頃です。

 

これだけのスケジュールをこなすには、やはり家族や周囲の協力が不可欠です。現在は月2回に減らしている当直も、腕や勘が鈍らないようにと月に5回入れていた時期もあったと言います。

 

小さな子どもと36時間離れていることもつらいですし、参観日、運動会、文化祭などの学校行事も、代わりの医師がいなければ参加できません。当時Kさんがいた病院は小規模なところで、まず休めなかったそうです。Kさんの実家は遠かったので、夫の実家へ子どもを預けて仕事をしていましたが、夫の実家は病院を営んでいて両親ともに忙しく、子どもの面倒は住み込みのお手伝いさんが見ていました。

 

子どもは幼少時さびしく思いながらも、それが普通だと受け入れていましたが、小学校、中学校と大きくなるにつれて、よその母親は家にいるらしいと気づき「僕たちは、母さんの仕事のために大変な目に遭っている」と言い出すようになったそうです。

 

そのためか、現在、東大文科二類に通う長男は高校生になった時点で、両親とは違う道に進もうと文系に決めていました。仕事か子どもか――という選択を迫られた時に、常に仕事を選んでいたことは、子どもにとっては大きな負担となっていたのです。確かに、医学部受験ブームは続いていていますが、両親の過酷な医師の仕事を間近で見続け、医師以外の道を選択する子どもが存在するのも事実です。

 

現在は、常勤医師が9人いる大きな病院に移り、誰か1人が平日に休みたいと言ってもカバーできる態勢が取れています。もし家庭と仕事を両立したいと考えるなら、ある程度の人数がそろった大きな病院のほうがいいのかもしれません。

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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