「コロナの元凶は冷凍食品」?強弁がもたらした「中国の勝利」

新型コロナウイルスが巻き起こしたのは「世界的流行(パンデミック)」だけではない。様々な情報が錯綜し、なかには作為的に流される「危険なウソ」も少なくない。筆者は過激なフェイクニュースが流れつづけるアメリカに住んでおり、今まさにウソ情報の氾濫を実感している身だ。ウソを見抜き、正確な情報に基づき「命を守る行動」を取るにはどうすればよいのか。日本でワクチンが接種開始となった今、知っておくべき「インフォデミック」の実態を解説する。

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「冷凍食品はコロナ感染のリスクあり」?中国発の情報

新型コロナウイルスのパンデミックで「おうち時間」が増えて以降、便利な冷凍食品を利用している方が多いと思います。

 

そのようななか、「冷凍食品が新型コロナウイルスの感染のリスクになる」という情報を聞いたことはないでしょうか。

 

この情報によって「一体、何を食べればいいのだろう?」「冷凍食品を買った後、どう対処すればいいの?」「冷蔵庫に入れる前に洗うべき?」などと悩む方もいらっしゃるでしょう。

 

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これは中国が提起した情報です。実は、中国とそれ以外の国とでは、科学者やジャーナリストの意見が分かれています。

 

そのような中、2021年2月18日、米農務省(USDA)、米食品医薬品局(FDA)と米疾病管理予防センター(CDC)は、「食品または食品包装を通じて新型コロナウイルスに感染する証拠はない」という共同声明を出しました(※1)

 

ちなみに、この3つの組織が共同声明を出すのはとても稀なことです。その背景には「冷凍食品のリスクの情報」に対する強い抗議が感じられます。

 

※1 https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/covid-19-update-usda-fda-underscore-current-epidemiologic-and-scientific-information-indicating-no

中国曰く「外国の冷凍食品が、コロナを運んできた」

2020年11月13日のCNNによると、同じ週、中国CDCの主任疫学者であるウー・ズニョウ氏は「冷凍シーフードや肉製品が、(新型コロナウイルスの)発生国から中国にウイルスをもち込む可能性を示す証拠がますます増えている」と述べています(※2)

 

そして、エクアドルのエビやロシアのイカ、ノルウェーやインドネシアの魚、ブラジルの牛肉や手羽先など、過去5ヵ月間に輸入した多数の冷凍食品やその包装から、新型コロナウイルスの痕跡を検出したと発表しました。

 

さらに中国税関は、11月12日時点で工場労働者の感染が確認されたといわれる、20ヵ国の食品会社99社からの輸入を停止したことを述べました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そもそもの始まりは2020年6月、北京最大の卸売食品市場にて新型コロナウイルスが発生したことです。これを受けて、中国は輸入冷凍食品を疑うようになりました。

 

それ以前、北京では56日間にわたり感染報告がありませんでした。ウー氏は、「新型コロナウイルスは、汚染されたシーフードや肉の輸入、または感染者によって市場に持ち込まれました」と述べています。ただし、当初結論を出すには調査が必要でした。

 

4ヵ月後、ウー氏は「コールドチェーン(低温物流)輸送を介して、汚染食品が、他の国で新型コロナウイルスの発生を引き起こす可能性があります。(北京での発生)は、世界初の発見と確認でした」と中央規律検査委員会で語りました。

 

ウー氏は、どのようにして結論に達したのかについては詳細を述べませんでしたが、他の中国の科学者や保健当局も、発生の原因として輸入冷凍シーフードを指摘しています。

 

中国では、健康の専門家と国営メディアが、急速にこの理論を主張するようになりました。一部には「2019年12月の武漢において、最初の新型コロナウイルスの発生を引き起こしたのは、輸入冷凍食品だったのではないか」と推測する人々さえいます。

 

※2 https://www.cnn.com/2020/11/13/health/china-frozen-food-coronavirus-intl-hnk/index.html

実際「冷凍食品からの感染」は非現実的

食品や包装から新型コロナウイルスを見つけることは技術的に可能ですが、確率としては低いと考えられています。

 

なぜなら「冷凍食品からの感染」には、次のような数々の前提が必要となるからです。

 

まずは感染した労働者が、マスクなしでくしゃみや咳をすること、または叫び声を上げること、さらに感染を引き起こすのに十分な量のウイルスによって、食品や包装が汚染されることが必須条件です。

 

その次に、ウイルスは国際輸送の長い旅をして、荷降ろしを経て、荷物の開放を待つ間も、食品や包装の表面上で活動し続けなければなりません。そこから、荷物の受取側である食品取扱者は、鼻や口に触れる必要があるのです。

 

シンガポール国立大学感染症専門医のデール・フィッシャー博士は、新型コロナウイルスが冷蔵および冷凍の肉や鮭でどれだけ長く生き残ることができるかを研究しています。

 

博士は、前述のCNNに対して「食品出荷の受取側の労働者は、作業面を清潔にし、頻繁に手を洗うことで、良好な衛生状態を保つべきです」「ただし、製品が動き回ったり触れられたりするたびにウイルスが希釈されるため、消費者が、冷凍や冷蔵食品の包装からウイルスに感染するリスクがあるとは考えていません」と言います。

 

また専門家は、中国の核酸検査は、もはや感染性のない死んだウイルスの遺伝子断片を拾い上げている可能性があると考えています。

WHOも「冷凍食品の危険性」をほぼ否定したが…

中国政府はその後、2021年1月29日から、世界保健機関(WHO)の専門家らによるチームに対して、新型コロナウイルスの発生源の調査のため、武漢市の研究所や疾病管理センター、生鮮市場などを訪問する許可を出しました。

 

2021年2月26日、科学誌『ネイチャー』のニュースは、WHOの調査を次のように報じています(※3)

 

「『新型コロナウイルスは、ウイルスに感染した冷凍済の野生動物から広がる可能性がある』という意見が勢いを増しています。WHOのチームは、この経路でパンデミックが始まった可能性は低いとしています。しかし、新型コロナウイルス発生の初期段階に寄与したという考えは否定しませんでした」

 

「WHOのチームは、新型コロナウイルスはおそらくコウモリから来たものであり、生きた中間宿主を介して人間に感染したとものと結論づけました。

 

ただしそれと同時に、中国の農場で飼育されていた野生動物の冷凍肉がウイルスに感染していたのか。そして、それが一番はじめに報告された、中国武漢の華南海鮮卸売市場での感染拡大の原因の一つとなったのかどうかを調査することが重要だと述べました。

 

しかし、感染した冷凍肉を調査するというWHOチームの呼びかけは『冷凍された表面にウイルスが広がっている可能性がある』という中国からの提案と混同されています」

 

「ここ何ヵ月もの間、中国のメディアは『新型コロナウイルスは、海外から輸入された冷凍野生生物とともに武漢に到着した』という考えを推し進めてきました。その後、地域における新型コロナウイルスの発生は、輸入冷凍食品との関連性があり、中国の科学者はますます『冷凍肉への感染は理論的に可能』という証拠を多数報告しています。

 

中国国外の多くの科学者は、コールドチェーン理論は、パンデミックの起源の全体的な調査を惑わすような情報で、批判をそらす試みであると主張しています。食品や包装などの汚染された表面を通して、人から人へと伝染することはまれであると言います」

 

※3 https://www.nature.com/articles/d41586-021-00495-0

WHOの調査がもたらした「中国広報の勝利」

科学誌『サイエンス』は、2021年2月14日のニュースで次のように報じました(※4)

 

「WHOは、『パンデミックの起源の調査結果を要約する』ために開催された、武漢での2月9日の記者会見は、中国国内で広く歓迎されましたが、他では批判されました」

 

「記者会見で、WHOのチームは、新型コロナウイルスが中国の研究所で発生したことは『極めて起こりそうにない』と述べ、この仮説はこれ以上調査しないと述べました。ところが、ウイルスが冷凍食品から武漢に到着した可能性は開いたままです。一部のジャーナリストや科学者は、このイベントを中国にとって二重の勝利と呼び、実験室理論の拒否についてより多くの証拠を要求しました」

 

また2021年2月9日のニューヨークタイムズにおいて、中国特派員ハビエル・エルナンデス氏は次のように批判しました。

 

「WHOのチームは、中国当局者を、非難する代わりに称賛しました。WHOのチームは、中国当局が採用した理論へ門戸を開き、ウイルスが冷凍食品の出荷を通じて人間に広がる可能性があると述べました。この考えは、中国国外の科学者にはほとんど注目されていません。そして専門家は、2019年後半に武漢でウイルスが発生する数ヵ月前に、すでに中国国外にウイルスが存在していた可能性があるかを調査する約束をしました。これは中国当局の長年の夢でした」(※5)

 

結局、WHOのチームの調査は、中国広報(PR)の勝利をもたらしたのです。

 

新型コロナウイルス感染症が発生してから1年以上が経ちましたが、未だ起源はわかりません。中国で新型コロナウイルスが発生した初期に、何が起こったのか。これを理解することは、次のウイルス感染症のパンデミックを防ぐために欠かせません。今の状況では、国際協力や共同研究がうまくできるか疑問です。

 

※4 https://www.sciencemag.org/news/2021/02/politics-was-always-room-who-mission-chief-reflects-china-trip-seeking-covid-19-s

 

※5 https://www.nytimes.com/2021/02/09/world/asia/wuhan-china-who-covid.html

 

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大西 睦子

内科医師、医学博士

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

 

 

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星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

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