贈与税のかからない「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」という制度は、きちんと理解して使わないと自身の医療費や生活費が足りなくなってしまうことがあります。ファイナンシャルプランナー・安田まゆみ氏の『そろそろ親とお金の話をしてください 』(ポプラ新書)より孫への教育資金の渡し方について解説していきます。

「孫のため」の思いをきちんと実現するには?

コツコツ貯めてきた資産を「かわいい孫のために使ってほしい」と願う人のために、「教育資金の贈与」という制度があります。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

資産を次の世代に引き継ぐ方法として代表的なのは相続と生前贈与ですが、資産を贈られた側には納税義務が発生します。ただし、生前贈与には、次の世代の生活や将来に役立つ目的での贈与に限り、認められている大きな非課税枠があります。

 

その1つが「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」というものです。当初、この制度は2019年3月までという期限付きの制度でしたが、2021年3月まで延長されることが決まっています。

 

非課税の枠は、受贈者(資産を贈られる人)ひとりあたり1500万円。段取りとしては、まず銀行や信託銀行で「教育資金口座」を開設し、資金を預け入れます。そして資金を払い出す時は、金融機関へ領収書などを提出する、というものです。

 

教育資金として適用となるのは、学校(幼稚園〜大学院、専修学校や各種学校、保育園など)に直接支払われるものと、学校外(通学定期代や留学渡航費、学習塾、野球やピアノなどスポーツ・文芸活動の指導料など)に支払われるものがあります。

 

制度適用にはいくつか条件があるものの、「孫に納税という負担をかけることなく、資産を譲りたい」と考える人にとって、また自分の経済力では我が子を大学に通わせるのがむずかしいと感じている親にとっては、願ってもない制度でしょう。

 

ただ、契約の終了時(孫が30歳に達した時など)までに1500万円を使い切れなかったら、残った分は祖父母からの贈与となり、孫は贈与税を払わなければなりません。また、祖父母が難病になり「医療費が必要になったので、口座を解約したい」と思っても解約することはできません。そういう点では、決して使い勝手がいい制度ではないのです。

 

それを考えると、わざわざ教育資金口座をつくらなくても、必要な時に必要な金額を渡せばいいのではないかと思ってしまいます。というのも、もともと教育資金や生活資金であれば、その贈与には贈与税がかからないとされているからです。

 

祖父母が孫に「大学の入学金に」と渡し、孫がそのためにお金を使えば、孫は贈与税を払う必要はありません。学校以外の塾や予備校に通う資金、生活費も同様です。

 

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そろそろ親とお金の話をしてください

そろそろ親とお金の話をしてください

安田 まゆみ

株式会社 ポプラ社

離れて暮らす親の老いは、子どもにとって心配の種。 そのひとつに「お金」の問題があるが、親子の間でもお金の話はなかなか聞きづらく、つい先送りにしてしまっている人が多い。 だが、もし親が認知症になってしまったら、…

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