典型的な高齢家族で、家族全体がおひとりさま
当然のことだが、年月の過ぎ去る速度と同時に、うちの家族も全員が高齢者になった。まさか、こんなに早くこの時が来るとは驚きだ。
妖怪は堂々たる90代に突入し、娘のわたしも前期高齢者、同居はしていないが妖怪の息子も65歳を超えた。そして、わたしのつれ猫までが人間でいうと68歳だ。
うちは、今の日本社会を表す、典型的な家族といえる。しかも、家族全体がおひとりさまだ。
わたしのつれ猫グレは、野良猫のアメリカンショートヘアと和猫の間に生まれたハーフで、めったにいない美猫だ。昨今のキャットフードのパッケージやCMで起用されている猫がこのタイプの子。
わたしはスーパーにキャットフードを買いにいくたびに、「ほら、この子、グレちゃんそっくり」「あら、あの子もグレちゃんだわ。でも、うちの子の方がかわいい」
と、満足して売り場を去る。
しかし、姿は美しいのだが、根性があまりよろしくない。親が野良猫だったせいか、人に懐かないのだ。彼女とはもう10年以上のつきあいになるのに、いまだに触ると噛むし、じっとしているときは、まるで警備員のような目つきでわたしを見ている。
そんなグレの様子を見て妖怪は、
「こんな凶暴な猫をもらって、失敗したわね」
とわたしが結婚に失敗したかのように言う。まったく、口が達者なかわいくない妖怪だが、きっと素直にほめるのが恥ずかしいのかもしれない。
「そうですか。でも、あなたの猫より美しいわよ」
とわたしは心の中で反論する。母と娘はどこまで行ってもライバルなようだ。