新型コロナウイルスの感染拡大により、在庫不足が続いているアメリカ不動産の「戸建て市場」。株式会社エー・ディー・ワークスの小川謙治氏は「今後、在庫不足や戸建て購入ブームが過熱する可能性がある」と述べています。今回は過去のデータから、アメリカ不動産の「戸建て市場」について見ていきましょう。

全米TOP5都市圏の住宅在庫/建築許認可件数の推移は…

それでは、2019〜2020年度で最も建築許認可件数が多かった全米TOP5都市圏の住宅在庫/建築許認可件数の推移を見てみます[図表2]。

 

[図表2]全米TOP5都市圏の住宅在庫/建築許認可件数

 

都市名の下にある右欄の数値はその年度の住宅在庫/建築許認可数[単位:千戸]を示しています。左欄は非農業部門雇用者数です。2015年12月時点は雇用者総数[単位:千人]、2016年以降は増減数[単位:千人]を表します。

 

2015〜19年の増減と、2015〜20年の増減には、左欄にそれぞれ4年間および5年間の総数[単位:千人]、下欄には年平均の増減数[単位:千人]を示しています。比較のために、許認可発行に対する規制が厳しいSFベイエリア都市圏におけるそれらについても付け加えました。

 

2020年度は新型コロナ禍ですべての都市圏で雇用者数を減らしています。これにより新型コロナ前後で雇用者増減数に変化が見て取れます。建築許認可数はコロナ前の雇用者増加に見合う形でコンスタントに増加しました。

 

ところが、コロナ感染が広がるとともに雇用者が減少したことにより、ダラス・フェニックス以外の都市圏では雇用者増加数を上回る建築許認可数になったのです。一方、SFベイエリア、特にシリコンバレー地区では、大幅に雇用者数が減少したとはいえ、1雇用者あたりの住宅在庫はまだまだ少ない状況であることが分かります。

過去1年の戸建ての極端な在庫不足は一過性のもの?

過去1年の戸建ての極端な在庫不足は、新型コロナ禍の一時的な現象かもしれません。そんななか、SFベイエリア所在のFintech会社であるRoofstock社(本社:オークランド)はPEファンドのバックアップで、2011年より純資産100万ドル超の個人投資家向けに全米の戸建て賃貸物件を販売するプラットフォームを立ち上げています。

 

同社はここにきて大手戸建てビルダーの一つであるLennar社がRoofstock社と提携し、Roofstock社のプラットフォームを利用して、ダラス・アトランタ郊外(車で1〜2時間のエリア)の新築戸建て賃貸物件を提供し始めました。

 

プラットフォーム上で建物診断調査レポート・登記簿謄本・売買契約書ひな形、等の資料を見て、現地視察することなく物件を購入できるサービスとなっています。また、米国内個人投資家だけでなく、海外投資家にも、物件担保付ローンの提供を行っているようです。

 

このような戸建て賃貸物件の購入サービスの提供は、さらに戸建て物件の在庫不足から戸建て購入ブームの火に油を注ぐことになるのではないかと、筆者はやや気になりだしています。

 

(本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。)
 

 

 

小川 謙治

株式会社エー・ディー・ワークス

金融商品開発部 ディレクター

 

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