相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすいとされています。そして、問題を曖昧のまま放置すると、孫の代まで絡んで収拾がつかなくなるケースもあります。今回は、相続した実家をきょうだい3人の共有名義にしたことで起こったトラブルについて解説します。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

親の死後、「共有名義の実家」でよくあるトラブル事例

実家の相続で典型的なトラブルは、親の死後、実家に住んでいる相続人と他の相続人の対立です。

 

例えば、3人の相続人(長男・長女・次男)がいて、実家に長男が住んでいる場合、長男は住んでいるので利益を独り占めしている形になっています。そのため他の相続人との利益の不均衡が生じ、主張の食い違いが出ます。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

具体的な事例で見てみましょう。実家の母親が亡くなり、同居していた長男と他の都市に住む長女、次男の3人が相続人になりました。預貯金などの資産があまりなかったため、遺産分割協議で実家は3人が3分の1ずつの持分で相続することとし、3人の共有名義となりました。

 

特に取り決めはしませんでしたが、その後、固定資産税は長男が払い、他に不動産に関する兄弟姉妹間の金銭のやり取りはありませんでした。長女と次男は家に住む長男が固定資産税を負担するのは当然だと思っていましたし、自分たちはそれぞれ家を構えているので特に長男に金銭的な要求をするつもりもありませんでした。

 

やがて相続がすんで10年ほどしたとき、次男がリストラにあって転職を余儀なくされました。収入が半減してしまった次男は実家の自分の共有持分が活かされていないことを意識し始め、長男に自分の持分を買い取るか持分に見合う賃料を払うように持ちかけました。

 

ところが、長男は「お前らに何の負担もかけていないし、固定資産税や家の維持費も俺が全部払っている」と反論してきました。逆に、もうそろそろ固定資産税を3人で負担したらどうかと言い出しました。さらに母親を最後まで面倒見たのは自分たち夫婦だし、長女と次男には父親が生前に住宅資金を援助しているといったことも持ち出してきました。

 

買い取りが希望なら応じるが、身内なんだから相場よりかなり安くしないと買わないとも返答しました。

 

これに対して次男は、「兄貴は実家に住めたのだから住宅資金もいらなかったし、結婚したとき増築までしてもらっているじゃないか。俺ら夫婦だってできる限り通って介護を手伝ったり、父さんや母さんが入院したときは交代で病院に詰めて看護したりもしている。ちゃんと役割に応じた務めは果たしているのに共有の対価がまったくないのはおかしいだろ」と譲りません。

 

買い取り価格は相場より安くてもかまわないが、ただ同然のような値段に応じるわけにはいかないと言います。

 

巻き添えを食った長女は、今のままでかまわないけど固定資産税を負担させられるのは納得がいかないと困惑しています。

 

ここでのいちばんの問題点は、遺産分割協議の時点で共有名義の処理について取り決めして文書にしておかなかったことです。

 

次男がリストラで経済情勢が変わったように、相続時点から時間が経過すると環境が変わることによる不満が表面化することがよくあります。特に、実家に誰か住んでいると持分の利益享受がアンバランスになるので、共有名義は住んでいない親族と対立する爆弾を抱えていることになります。

 

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不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

松原 昌洙

毎日新聞出版

本書では、「富裕層ではない一般の人」が親の死亡で実家の不動産を相続したときに起こるトラブルに焦点を当てて、その背景や原因についてわかりやすく説明し、解決策や予防策を紹介します。

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