介護が必要になった原因の1位は認知症
健康が損なわれると気持ちも落ち込んでしまいますが、お金もかかります。
年齢が上がるほど入院が長くなり、治療費もかかります。こう聞くと、やはりお金が不安になってくるでしょう。しかし、自己負担額はそれほど多くありません。健康保険がありますから、自己負担は治療費の3割です。70歳からは自己負担は2割になり、さらに75歳からは後期高齢者になるため1割に減ります(現役並みの所得者は3割)。
また「高額療養費」も使えます。70歳以上の一般的な所得の人なら、自己負担額の上限は5万7600円になります。収入が年金だけで住民税が非課税の場合は、2万4600円(年収80万円以下は1万5000円)が上限です(健康保険の自己負担額、高額療養費制度の自己負担額は、所得によって異なります)。
「入院が心配。医療保険に入ろう」と焦る人もいますが、高齢だと保険料が高くなります。安心を得たい気持ちはわかりますが、医療保険は優先度の低い商品です。
介護の問題は、ある日突然やってくる
自分の介護は遠い未来の話ですし、親の元気な姿を見ていると、まだまだ先のような感じを受けますが、介護が必要になるときは、突然やってきます。そのときになってから慌てないよう、備えだけはしっかりしておきましょう。
身体が徐々に弱ってくるなら、それに合わせて準備も整えられますが、要介護は予期せぬタイミングで始まる場合も多いのです。
厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年)のデータによると、介護が必要になった主な原因の1位は認知症(18.0%)、2位は脳血管疾患(16.6%)、3位が高齢による老衰(13.3%)、4位が骨折・転倒(12.1%)です。なかでも、2位の脳血管疾患と4位の骨折・転倒は、介護が突然始まることが多いといえます。
では、要介護になった場合はいくら必要でしょう。
公的介護保険がありますから、原則1割の負担で介護サービスを受けられます。ですので、自己負担はそれほど多くなりません。しかし、公的介護保険だけではいきれない部分があるのも事実です。公的介護保険の上限を超えたぶんや、対象外のサービスは自己負担になります。
損保ジャパン日本興亜の「介護費用に関するアンケート調査」(2019年)では、介護にかかる初期費用は98.1万円、月額費用は12.7万円、介護期間の平均は約3年7か月、介護費用の総額は平均787万円となっています。
平均期間は約3年7か月ですが、実際にどのくらい続くかわかりません。介護費用として800万円くらいは準備しておきたいものです。
民間の介護保険もありますが、介護費用は保険より現金で備えるほうが合理的です。
生命保険文化センターのデータで見ると、80歳前半で要支援・要介護の認定者は約3割です。85歳以上では約6割となります。微妙な割合であり、介護が必要になるか否かはなんともいえませんね。だからこその現金なのです。
もし介護が必要になれば、介護費用を取り崩せばいいのです。元気で暮らせるのなら、美味しいものを食べたり、配偶者の死亡に備えるなど、老後資金に充てられます。あるいは、子や孫に残すお金にもなります。現金はいろいろな用途に使えるため、便利なのです。
しかし、余裕資金がなくて介護費用の準備ができない人は、保険で備える手もあります。その場合は、死亡保障がない保険料の安い商品を選びましょう。大事なのはなんといっても老後の生活です。保険料が高いと老後の生活費まで圧迫してしまいます。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員
福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士
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