「人生100年時代」といわれています。22歳から65歳まで現役で働いていた時間よりも、定年後の時間のほうが長いのです。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」。これが定年後の3大リスクです。この「3大リスク」をうまくクリアできれば、第二の人生をバラ色にすることがきます。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

患者は約700万人、高齢者の約5人に1人が認知症に

アルツハイマー型の認知症は早期の発見と治療が肝心

 

老後の大きな健康リスクのひとつに、認知症があげられます。

 

認知症の患者数は、2012年の時点で462万人。65歳以上の7人に1人は認知症だと推計されています(厚生労働省「認知症施策推進戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて」)。認知症の前段階といわれる「軽度認知障害(MCI)」は、推計で約400万人です。これを合わせると、高齢者の4人に1人は認知症、またはその予備軍となります。

 

さらに、2025年には認知症の患者は約700万人、高齢者の約5人に1人が認知症になるという予測です。

 

ますます高齢化が進む現状を考えると、認知症の問題はけっして他人事ではありません。

 

認知症は家族の負担のほか、高額賠償の金融リスクも存在するという。(※写真はイメージです/PIXTA)
認知症は家族の負担のほか、高額賠償の金融リスクも存在するという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

認知症には、いくつか種類があります。厚生労働省の資料によると約70%近くがアルツハイマー型の認知症で、約20%が脳血管性認知症、約4%がレビー小体型認知症です。

 

認知症と正常との中間の状態を軽度認知障害(MCI)といいます。物忘れはあるけれど、日常生活には支障がない状態がこれに当たります。認知症が年間10〜30%ぐらい進行する場合もある半面、正常なレベルに回復する人もいます。

 

アルツハイマー型認知症を治すことはできませんが、早期発見、早期治療が有効であるとわかってきました。早期に発見すれば、薬を使って病変の広がりを遅らせることができるそうです。もちろん、入院期間も短くなります。しかし、病変が広がったあとでは薬の効果が薄れ、結果的に入院が長くなってしまいます。

 

認知症の代表的な検査は、「長谷川式簡易知能評価スケール」と「ミニメンタルステート検査(MMSE)」の二つがあります。健康でいられる時間を延ばすためにも、とにかく早めに受診することをお勧めします。

 

認知症の介護は家族の負担がとても大きい

 

認知症の介護は通常の介護より費用がかかります。約20%プラスされるという試算もあります。費用の負担も重くなりますが、それ以上に家族の負担が大きくなります。

 

ここに厚生労働省と慶應義塾大学の研究班のデータがあります(認知症の社会的費用を推計)。その研究によると、年間にかかる社会的コストは、医療費が1.9兆円、介護費が6.4兆円、インフォーマルケアコストが6.2兆円となっています。インフォーマルケアコストとは、家族などが無償で実施するケアにかかる費用のことです。

 

この数字を個人に置き換えるとこうなります。

 

・1人当たりの入院医療費は月額34万4300円
・1人当たりの通院医療費は月額3万9600円

 

入院医療費については実際は高額療養費があるので、70歳以上で一般的な所得の場合、月に6万円ぐらい(年収によって負担額は変わります)です。

 

通院医療費も70歳以上は2割負担になるため、月額約8000円になると思います。年間で10万円ぐらいの負担額です。

 

では、インフォーマルケアコストはどうでしょう。家族が無償でおこなうケアですので、それにかかる時間を介護単価とし、代替費用法、遺失賃金法で計算します。

 

・要介護者1人当たりのケア時間は、週に24.97時間
・要介護者1人当たりインフォーマルケアコストは、年間382万円

 

認知症患者の家族には、時間という負担が驚くほどかかることがわかると思います。

 

介護が必要になる年代は70歳以降からが多く、子どもはまだ50代ということもあります。介護のために仕事を続けることが難しくなり、介護離職というケースも多くみられます。介護離職をすることは、収入の減少を意味します。

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定年の教科書 お金 健康 生きがい

定年の教科書 お金 健康 生きがい

長尾 義弘 福岡 武彦

河出書房新社

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