「家族信託と成年後見制度」できることの比較
成年後見制度は複雑でわかりにくい。一方、家族信託はどうかと言えば、これまたまったく新しい発想の法律が基になっており、法律の専門家でも説明しにくいところが多々ある、という難物です。
だから両者の「解説」から始めようと思いましたが、やめました。理屈から入ってもなかなかイメージしてもらいにくいのです。それより、成年後見と家族信託でそれぞれ何ができ、何ができないかを示した方が早いのではないか、と考えました。
「〇△×の一覧表」を作りました。この表に「家族欄」も加え、家族信託の受託者兼家族なら何ができるかを「家族の力」として、赤い文字で表示しました。つまり成年後見人ができることと、受託者になった家族ができることを表にしたのです。
まず各項目になぜ「〇△×」が付いたのかを説明します。
家族信託の受託者では預金口座の「凍結解除」は不可
では「成年後見」申立ての入り口になる最大の要因である「預貯金口座の開設や解約、取引」から見ていきましょう。
いきなり、著者が最も重要だと思っていることを言います。家族信託の受託者は、凍結された預金口座の解約なんてできません!
銀行に行って家族信託の契約書を窓口の行員に見せて、「私は〇〇〇〇さんと家族信託の契約を結び受託者になりました。だから〇〇〇〇さんの預金通帳をここに持ってきましたが、この通帳の〇〇〇〇さん名義を私の名義であるXXXXに換えてください」と言ってもけげんな顔をされるだけです。
行員が家族信託を知らないからではなく、信託受託者にそんな権限はないからです。
家族信託の受託者が、委託者兼受益者である〇〇〇〇さんの金融資産を処分できる(通帳から引き出したり振込、入金などを行うこと)のは、先に〇〇〇〇さんから一定の金銭を「信託財産」として預かり、受託者名義の通帳にその金銭を入れて管理しているからです。自分の名義にしているから、金銭の出し入れが自由になるだけです。
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