認知症の財産管理…「成年後見」と「家族信託」の決定的な違い

認知症になる高齢者の数が増加しています。残された家族がお金で困らないように、「成年後見制度」と「家族信託」の2つの財産管理の方法が有名ですが、両者の違いはどこにあるのでしょうか? 使い分け方を解説します。※本連載は、石川秀樹氏の著書『認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託』(ミーツ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

開始時期による「成年後見制度」と「家族信託」の違い

「成年後見」と「家族信託」どちらを使う?(※画像はイメージです/PIXTA)
「成年後見」と「家族信託」どちらを使う?(※画像はイメージです/PIXTA)

 

成年後見制度と家族信託は、認知症対策のツール(手段)として東西の両エースと目される「財産管理手法」です。

 

思わず「エース」などという言葉を使ってしまいましたが、ご家族にとってはどちらも、できれば使いたくない制度でしょう。家族の中に認知症を懸念しなければならない人がいる、――手遅れなら成年後見制度、間に合うなら家族信託制度――という二者択一を迫られて、(どちらも)やむなく使う、あるいは使わざるを得ない2つの制度なのですから。

 

家族にとっては、「認知症」がそんなに重大事を招くとは思わなかったでしょう。真剣に検討せざるを得なくなったのは、「財産凍結」です。その最もわかりやすい例が、<銀行は最近、定期預金の解約を(本人でなければ)成年後見人にしか認めない>ようになってきた、ということです。

 

なんと民法は堅苦しくなってしまったんでしょう。

 

いや、民法のせいではないですね。同じ民法の下、平成12年(2000年)くらいまでは銀行も、ここまで庶民の預金の出し入れに口出しをするなんてことはありませんでしたから。

 

“時代の空気”とでも言うのでしょうか、本人が意思能力を失っていれば、代理を頼む人と事前に取り決めや約束をしてあっても、一切の代理を認めない…以前ならあり得ないような対応を、金融機関が「右へならえ」をするように、こぞってとるようになってきたなんて。

 

だから成年後見も家族信託も、皆さんから待望されるような制度ではありません。しかたなく使う制度です。身もふたもない言い方をすれば、どっちがマシか、という話。

 

目的が同じなので混同されますが、方法はまったく違います。方法の違いの中で一番大きいのは、開始時期の違いです。

 

成年後見は手遅れになったときに使う手段です。認知症その他の事故や病気のために本人が意識障害に陥ったり、脳の機能の一部が失われ事理弁識能力(自分がした行為の結果や影響力を認識できる能力)を欠く常況になり、いわゆる「委任――代理」という方法が使えなくなった時に、法律が認めた代理人を立てることで本人の代わりを務める、という方法。

 

一方、家族信託は手遅れになる前に手を打っておこうという手段です。いわば“転ばぬ先の杖”。認知症になることを懸念した本人や家族などが先回りして、判断力がしっかりしている間に財産を、信頼できる第三者に託してその人の名義に換えておく。そうすることで、財産の管理・処分権をあらかじめ本人以外に移しておく、という手法です。

 

どちらも、自分が困ったときに助けてくれる“分身”を作る方法ですが、発想は共にユニークで、ふつうの感覚からすると「どちらもひどくわかりにくい」のです。

 

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    静岡県家族信託協会 代表・ジャーナリスト・行政書士
     

    1950年静岡市生まれ。早稲田大学第一政経学部卒。静岡新聞記者40年、元編集局長。62歳で相続専門の行政書士開業。2016年に家族信託に出会う。同時に成年後見制度を知ることとなり、記者として家族として疑問に思うことが多く、2018年7月静岡県家族信託協会を設立。『静岡県家族信託協会のブログ』で晩年の諸問題について解決法を提起している。

    著書:
    『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』
    『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』

    1950年静岡市生まれ。
    1973年3月 早稲田大学第一政経学部卒業
    1973年4月 静岡新聞社に入社
    2004年3月 編集局長
    2012年8月 新聞社退職後、行政書士に
    2016年3月 家族信託を手掛け普及に乗り出す
    2016年11月 『大事なこと、ノート』刊行
    2017年11月 家族信託のパンフとヒヤリングシート作成
    2018年5月 静岡県遺言普及協会を設立
    2018年7月 静岡県家族信託協会を設立
    2019年4月 『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』を出版
    2022年10月  『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』 を出版


    静岡県家族信託協会(ホームページ)
    ジャーナリスト石川秀樹(Facebook)

    著者紹介

    連載専門家が解説!認知症になってもお金に困らないため「家族信託」活用法

    認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託

    認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託

    石川 秀樹

    ミーツ出版

    認知症による預金凍結を防ぐ。名義を移してお金“救出”信託こそが庶民の知恵。カラーイラスト、読みやすい文章、豊富な信託事例。 第1部 認知症と戦うー財産凍結の時代が来た!成年後見より家族信託を使え 第2部 受益権…

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