「駅近物件」あえて畳の部屋で勝負
そこまで大規模な仕組みではなくても、ちょっとした工夫で差別化できるケースもあります。たとえば、最近は琉球畳などを置いた和室的なスペースが人気を集めています。特に都心部の超高層マンションなどで人気になっていますし、分譲だけではなく、原宿や代官山などの高級賃貸でもそんな物件が増えています。
また、一戸建ての住宅展示場に行くと、かなりの確率で琉球畳の部屋が設けられています。リビングなどに隣接した小上がりといった感じの洒落た感じにしている物件も見られます。
畳の和室がありそうな古い木造アパートしかないような場所だと、いまさら琉球畳の部屋もあったものではないかもしれません。かえってやぼったく見られてしまうかもしれません。しかし、駅近などの比較的人気があり、家賃相場も高いエリアなら、そんなお洒落な雰囲気が評価されるかもしれません。
逆に、シンプルな形に特化して入居者を確保する方法も考えられます。
これは、千葉県松戸市で手がけた例ですが、松戸市は大手製造業などの支店や営業所が多く、その社員のための賃貸住宅ニーズが強かったのですが、最近統廃合によって支店や営業所などが減って需要が縮小してしまいました。
こうした外的要因はなかなか予測できません。ですから、若い社員向けの20m2前後のワンルームや1Kの賃貸住宅を建てた人が多かったのですが、その人たちがいまたいへん困っているのです。
入居者が減って空室が増加、賃料も低下しています。といって、20m2という狭い空間ではリフォーム時に工夫するといっても、できることは限られています。
そこで、私は思い切ってユニットバスの3点セット(浴槽、洗面、トイレ)を取り外して、シャワーとトイレだけのシンプルなものにしました。最近の若い人は湯船はいらないという人も少なくありませんし、シャワーとトイレという欧米風のシャワールームが思いのほか人気を集めました。なかには、「こんなお洒落な住まいがこの値段で借りられるのか」と驚く人もいたほどです。
年配の人だとトイレとバスが一緒になった欧米スタイルというだけで敬遠する人が少なくありませんが、若い人のなかにはそんなことは全然気にしない人が増えてきました。その意味でも古くからの固定観念にはあまりとらわれないようにしたほうがいいでしょう。
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