商社マンの夫と専業主婦の妻は、高齢となった夫の母親と同居しつつ平穏に暮らしています。しかし、そこに問題のタネがありました。それは「離婚した子連れの妹」の存在です。夫婦には子どもがないため、相続が発生すると、気の強い妹が、かつての父親の相続時と同様のトラブルを引き起こす可能性があるからです。防ぐ手立てはあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

父の相続で妹が大暴れ、自分亡き後の妻が心配…

今回の相談者は、50代の男性の大久保さんです。自分の亡きあとの財産をすべて妻に遺せるようにするため、アドバイスがほしいとのことでした。

 

大久保さんは商社勤務で、若いときから日本国内はもとより、海外など複数の国や地域を飛び回ってきました。数年前に東京本社に呼び戻され、いまに至ります。東京本社勤務をきっかけに、実生活では都内にある実家で両親と同居を開始。30代で社内結婚した妻は専業主婦として、大久保さんの身の回りのことだけでなく、両親の世話も引き受けてくれました。数年前に父親は他界し、現在は母親と3人暮らしです。


 

じつは大久保家には気がかりな問題がありました。大久保さんの妹のことです。妹は両親の反対を押し切って結婚したものの、子どもができてすぐに離婚。その後、実家近くの賃貸マンションに引っ越してきましたが、仕事を理由に子どもは母親に預けっぱなしの状態で、ろくに面倒も見ていません。若いときからお金遣いも荒く、常に大久保家のトラブルメーカーでした。

 

大久保さんの父親が亡くなったとき、遺言書はありませんでした。そのため、母親、大久保さん、妹の3人で分割協議をしましたが、妹は子育てが大変だからと多額の預貯金の相続を主張するだけでなく、住んでもいない実家の権利をほしがって譲らず、結果、実家の土地は母親と大久保さんと妹の共有名義となっています。

 

大久保さんと妻の間には子どもがいません。現在のところ目に見える問題は発生していませんが、将来母親を見送ったあと、対策を立てないまま大久保さんが亡くなれば、大久保さんの財産は妻だけでなく、妹にも相続権が発生することになり、揉めるのは目に見えています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「おそらく妹は、父親のときと同様、必ずごねて財産を請求してくるはずです。おとなしい妻は妹に対抗することができず、大変な思いをするでしょう…」

 

その話を聞いた筆者は、大久保さんに遺言書を作成するようアドバイスしました。「自分の財産をすべて妻に相続させる」と明記しておけば、妹と妻の相続争いが予防できるからです。

 


 

遺言書

 

遺言者 大久保誠は下記のとおり遺言する。

 

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産のほか預貯金を含む全財産を、遺言者の妻・由美子に相続させる。

 

【土地】

所在        〇〇区〇〇一丁目

地番        〇〇番〇〇

地目        宅地

地積        〇〇m2

遺言者の共有持ち分        4分の1

 

【建物】

所在        〇〇区〇〇一丁目

家屋番号        〇〇番〇〇

種類        居宅

構造        木造スレート葺2階建

床面積        1階 〇〇m2 2階 〇〇m2

 

第2条 遺言者は、本遺言の執行者として、妻・由美子を指定する。

2 遺言執行者は、不動産の名義変更等、本遺言を執行するために必要な一切の権限を有する。
3 遺言執行者が任務遂行に関して必要と認めたときは、第三者にその任務を行わせることができる。


付言事項

妻・由美子には、私の両親や姪に至るまで面倒を見てもらい、心から感謝している。

 

令和〇〇年〇月〇日

〇〇市〇〇町〇〇

遺言者 大久保誠

 


 

 

次ページ子のない夫婦の場合、きょうだいにも相続権が発生する

本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録