「緑色信貸・緑色債券」市場発展に期待
ファイナンス面では緑色信貸(グリーン融資)、緑色債券(グリーンボンド)市場の発展が期待される。2020年末の緑色信貸残高は12兆元弱で世界1位、緑色債券残高は8132億元で世界2位だ(2021年2月、国務院新聞弁公室主催のグリーンファイナンスセミナーでPBC幹部が発言)。
特に緑色債券は2015年末に導入されて以降、市場は短期間で急速に成長している。ただし、気候債券イニシアチブ(CBI)が定義する国際基準を満たす債券は約半分だ。2020年、中国で緑色債券とされている債券のオンショアでの発行は217本、2243億元(オフショアを含めると2787億元)、新型コロナの影響もあり、初めて前年比やや減少。
ただ、これまでは発行体の60〜80%が金融機関だったが、2020年は金融機関が16.4%、非金融企業82.2%と構造変化が見られた。毎年の発行額は世界1位または2位で、累計発行額は1.1兆元強(同1.4兆元強)だ(2021年2月25日付新華網他で報道された中央財経大学緑色金融国際研究院、中国清潔発展機制基金などの報告)(※3)。
(※3)CBI・中国中央国債登記結算有限公司中債研発中心「中国緑色債券市場2019研究報告」によると、2019年に中国がオフショアも含め発行した(中国の定義による)緑色債券は3862億元(558億ドル)、前年2826億元(420億ドル)比33%増。CBIと中国の定義の相異は、①CBIが気候変動緩和・適応措置のみを対象としているのに対し、中国は汚染物質削減や生態環境保全なども含めている、②中国は企業が緑色債券で調達した資金の一部を通常の事業資金に使用することを認めている。
以前から内外で、PBCや発改委が発出している異なる緑色債券基準システム(タクソノミー)の改善、証券監督管理委員会(証監会)による緑色債券に関する評価・認証や投資家に対する情報開示面での改善、グリーン資産担保証券など商品イノベーションの一層の推進など、多くの課題が指摘されてきた(※4)。
(※4)国際通貨基金(IMF)・日本証券経済研究所共同出版、筆者監訳『中国債券市場の未来』第7章(幻冬舎ゴールドオンライン「ブックガイド」参照)
すでにいくつか動きはある。タクソノミーの統一化に向けて2019年3月、PBCや発改委など7関連部門が共同で初めて「緑色産業指導目録」、さらに2020年6月、PBC、発改委、証監会が共同で「緑色債券支持項目目録意見募集稿」を発表。
またPBCは、格付AA以上の緑色債券を、金融機関が中期貸出ファシリティ(MLF)などで流動性供給を受ける際の適格担保にするなどの措置を導入済だが、上記国務院セミナーで、さらに第14次5ヵ年規画期間に向け、グリーンファイナンス支援のための政策パッケージを検討中と発言している。
また国務院は2021年2月、「グリーン・低炭素循環発展経済システムの構築を加速するための指導意見」を発表、その中で、グリーンファイナンスを重点的に発展させるとし、緑色信貸のみならず、緑色債券など緑色直接金融を発展させること、緑色金融面での金融機関の評価、緑色債券格付、タクソノミー統一化などでさらに改善を進めていく方針を示している。
最終回は規画を見る全体的観点、および2035年遠景(長期)目標について触れる。
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